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トルコ人ばかりのパーティーでしたのに、トルコ語でどんどんと雑談をなさっていた。だれも先生が日本から来たばかりだなんて信じられないようでした。こういった姿勢がこれからもっと奨励されていけば、随分と違ってくるのではないかと思います。)

 

青木 ヤルマンさんは、ハーバード大学で、最も美しい英語をしゃべる教授です。しかも、英語は一番最後に学んだ外国語で、一番最初は、トルコ語よりも先にドイツ人の家庭教師からドイツ語を学んだ。ドイツ語はぺらぺらだし、フランス語は、フランス人が驚くぐらいうまい。スリランカ語もできる。恐らく中東の言葉、アラビックもペルシャ語もできるでしょう。こういう人が育つのが世界都市の条件ではないか。アメリカではすごいトルコ主義者で、すぐトルコは、トルコはと言う人で、愛国主義者でもあります。

 

世界的普遍性を持つ縄文時代文化

 

藤井 世界都市東京は世界に発信する基本的なものは何だろうか。私は「Be ourselves」、要するに、我々に戻ると思っています。ということは、世界の文明は、今はアメリカ文明です。これはこれですばらしいことだと思います。民主主義、人権、透明性、市場経済など、とてもすばらしい。我々も大いにアクセプトして、これを世界に広げていくことをすべきと思うのです。他方、それだけでは世界の人々は生きていけない。そこで、我々日本人ができることは、世界の最先端の経済と技術を持って「Be ourselves」することです。日本の場合、Be ourselvesは縄文時代の1万2,000年前から美しい土器をつくってきている。それが基礎文化で、神道の祭りは、基本的に縄文の文化です。世界の人類は必ず縄文時代のような新石器時代を経てきていますので、大変な普遍性を持っている。それを最先端の社会、経済、技術と一緒に世界の中で蘇らせていく。人間、個人と同じように、すべてものは対等であるという思想は、日本人には非常に通りやすい。日本は、歴史を否定している。特に戦後、否定してきた。我々はBe ourselvesでなく、逆をやってきた面があります。ですから、パラダイムを変えていかなければいけない。変えていけば、持っているものはすばらしいものがあると思います。

それから、個人的なつき合いは、とても大事で、日本人に欠けているところだと思います。日本に住んでみると、いい国です。そういう面では個人的なつき合いがすごくある。ただ、日本人でない人との関係では、そこまで開かれていない面がある。東京は、犯罪は少ないし、安心だし、歩いている限りはすばらしい町だと思う。四季もすばらしい。何よりもうれしいのは、最先端のビルもありますが、お豆腐屋さんもあって、朝から家族でお豆腐をつくっている。お豆腐屋さんの前を通るたび、心の中でおじぎしています。

アジアに勢いがあることに全く同感で、2001年に、国際交流基金が横浜でトリエンナーレという催物をやります。これはコンテンポラリーアートつまり現代美術展です。また、長谷川さんという若い日本人女性が総合ディレクターになり、イスタンブールでもトリエンナーレをやります。日本の20代の若手のアーティストが横浜のトリエンナーレに出てきている。これは日本だけでなく、アジア全体に出てきているということです。

そういう意味で、東アジア共通文化が成立すると思います。これは、芸術文化だけのフィールドだけではなくて、知的対話などを通じて共通の現象です。現代化とは何か、アイデンティティーはどうしていくべきか、そういう問題について中国、その他の方々と日本人との対話が深まり得る余地があると思います。そんなものをひっくるめて、東京は世界都市として独自に提案できるものが非常にあると思う。そのためにも、非日本人の力も得ながら、美しい東京をつくっていく必要がある。

 

岡本 多分、日本人が日本に対して自信を失っているバックグラウンドがあって、それが論調のパネルになっている気がします。長いこと東京、日本について同じような議論が繰り返されてきたにもかかわらず、どうしたらいいのかというところは、それほど大きく前進してこなかった。東京が持っているものはすばらしいと思うのですが、どう世界都市に持っていけるのか。ロンドンで文化が再興してきた背後に、サッチャー政権の政策がありました。

 

 

 

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