地球共通文明形式の条件
東京という都市でものを考えること、その東京を世界都市という観点でとらえることに共鳴します。21世紀の世界では、国民国家以外のプレーヤーが増大して、経済の相互依存が急速に深まり、地域でなくて、地球共通の文明のごときものが形成されていく。他方で、それぞれの国、民族は、自分の文化がより大事になってくるという側面がある。そんなようなことを全部引っくるめて、21世紀のこの地球文明というものが、徐々に形成されつつあると思う。
そのような世界では、場所性というものがより重大になってくる。国家の重要性が相対的に減少するわけで、都市というものの意味、場所としての都市という意味がさらに重要になってきて、都市間の国際競争が激しくなってくると思います。
世界都市になるには、物流とか金融、GDP等の経済的実力、政治的、軍事的な実力というハード、あるいは規模のみが決定するものではない。それだけならば、ローカルな世界的都市、World Class Cityと呼ぶべきである。それとは別に、世界都市があるとすれば、21世紀の地球文明の形成に重要な役割を持つような場所、ほんとうの意味での世界都市であろうと思います。これは地球の上に必ず複数存在することと思います。香港とかシンガポールを考えると、もう一つ国際都市があるかもしれないと思いますが、東京を考えるときは、世界的都市か、あるいは世界都市か、この2つのほうが重要な概念規定と思います。世界都市の特性は、政治も含めた経済のダイナミズムがまず第1に基本的にある。第2が、独自の知的な、文化的なソフトの量と質があるということです。第3に、世界の人々にとって魅力があることで、この3点が世界都市の大きな属性であると思います。
この3点に共通して、文化が21世紀にいかに重要であるかということが出てくる。なぜならば、経済のダイナミズムにとって、21世紀は文化や魅力がきわめて重要であるということです。既に経済のダイナミズムの中にも文化が入っています。独自の知的文化、これはもう言うまでもありません。第3の魅力は、歴史、文化、自然の3つが基本になって形成されていくと思います。なお、ソフトの生産は、かなりの部分、歴史、文化、自然にもよりますが、より直接的には異種混交、同業種集積の2つによってかなり強化されるという感じがします。例えば、異種混合の典型的な例が、アメリカやイギリスで大学が果たしている中心的な役割です。例えば、シリコンバレーは、大学が中心になって、その周りに、大学を出た人たちが企業を起こすということです。これはイギリスでつぶさに見てきたところです。これが異種混交の1つの大きな典型例です。
同業集積は、例えば香港の最大の強みは、歩いてほとんどのところに行けることです。歩く範囲のセントラルという場所に世界の企業が集まっている、特に金融機関等々が集まってきているコンパクトな点、世界の同業者が集まっていることが重要です。原型は、イギリスのシティーにある。シティーは、1マイル平方の中に世界のあらゆる金融機関が集まっている。ちなみに、シティーは、金融機関だけではなく、法律と会計という異種混合機関が一緒になって強みを発揮している。そういうコンパクトであることです。
今国際文化交流の国際交流基金にいるのですが、東京にもきわめて多くの優秀な世界的シンクタンクやチャリティー、ファウンデーションなどがある。そのヘッドクォーターはあるし、出先もある。それが、東京のどこか1つか2つのビルにすべて納まったらどうだろう。そうすると、世界的にすばらしい場所になって、そこで昼飯を食べたり、帰りに一杯飲んだりして、そこでの話は世界の中でも文化交流の最先端をいくのではないかと思う。それが、同じ量があっても、東京中に散らばっていたのでは、意味が大分後退すると感じています。いずれにしても、東京は世界的都市、ワールドクラスシティーであることは問題ないと思います。東京は世界最大のGDP産出都市で、ニューヨークを超え、ロサンゼルスを超えてワールドクラスであることは問題ない。
21世紀に東京が世界都市になり得るかという点は、努力をしなければならないのではないかと思います。その努力は21世紀地球文明への貢献度を高めることです。