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しょっちゅう来られるので、長期滞在が普通で、夏、クリスマス、復活祭、カーニバルのころにもよく来ます。

セカンドハウスは自分で買います。普通の人が住んでいたところを、ジェントリフィケーション、つまり、買って、修復して、格好よく住む。しかし、地元のベネチア人からすれば問題です。というのは、普段は空き家ですから、八百屋や魚屋など一般商店が経営できなくなってしまいます。高級ショップばかりになってしまう。ネガティブな意味でのジェントリフィケーションです。しかし、人気があって集まってくることはポジティブだと思う。

観光客もかなり長期滞在者がいます。リピーターが多く、夏に長期滞在する。その場合はホテル住まいです。映画祭、ビエンナーレなどをゆっくり見る観光です。よく聞かれるんですが、ベネチアの経済がどのぐらい観光に依存しているかを数字で示すのは不可能です。観光の概念が広い。中規模のコンベンションもいっぱいあります。コンベンションは短期滞在と思います。

イスタンブールほどではないが、イタリアでは移民が大きな問題になっています。東欧ががたがたになってから、とりわけ旧ユーゴやアルメニアからどんどん人が流れてくる。イタリア人に言わせると、アルメニアの人が一番荒っぽくて、大変だと言うのです。治安も悪くなっています。彼らは、何らかの形で不法に滞在して労働力になります。労働者では北アフリカのムスリムの人たち、リビアやアルジェリアの人たちがホテルやレストランのボーイやスタッフとして働いていて、いいポジションも持っています。そういう形でインテグレートされていっている。

そういう寛容さは、イタリアの場合、植民地をほとんど持たなかったので、イギリスやフランスとは違うような感じがする。今、そういう現象がこの10年間で強まってきて、日本とよく似ていると思います。それを国として、都市としてどのように対処していくかは大きな問題です。

 

エンパイア精神

 

山室 日本とアジアの他都市との役割分担はおもしろいと思う。日本の国内の中でも分担の問題があると思う。

福岡に行くと、ハングルの文字が全部あって、韓国の人には地下鉄なんかわかるようになっています。東京は、ホテルに行けば、もちろん英語とハングル、中国語と3つが大体ありますが、それ以外はほとんどわからない。日本の都市の中でも、京都、大阪、福岡とか、都市の分担の中の世界都市みたいなのがあるかもしれません。

 

陣内 そう思います。

 

青木 表示は大問題。昔から全然改善されない。

 

陣内 レジュメに「小さな世界都市連合」ということを書いたのですが、実際あるのです。3年ぐらい前、柳川市に呼ばれてしゃべったことがあるのですが、柳川や高山とか、個性を持って頑張っている。文化的発信をしている街がネットワークを結んで、知恵を交換しようとしている。そういうところは東京・首都の頭越しに国際交流をやっている。実際、刺激を得ている。

ヨーロッパはEUが統合されてくると、とりわけイタリアなんかでは国家なんて全く意味がなくなる。北イタリアの、ベネチアのヒンターランドだった街なんかみんな小さい。人口が3万人ぐらいから30万人ぐらいです。そういうところの小企業の経営者が非常に元気で、ビジネスは、ヨーロッパの各国とダイレクトにやってしまう。日本ともです。ですから、商社も問屋もないわけで、みんな自分たちでやってしまう。そういう国際性、世界都市性を持っている。そういうスピリットがあらゆる規模の都市や地域に出てこないといけないのではないかと思うのです。

福岡がアジアと結びついてすばらしいと思うし、日本海側の都市はもっと地理的に恵まれた条件があるわけですから、もっともっと交流をつくっていったらいいのではないかと思う。

 

青木 今、どこへ行っても同じものばかりつくっている。ともかく去年も鳥取とかいろいろなところに行くと、全く同じようなセンターばかりある。なぜああいうあほなことをするのか。

 

 

 

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