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これは賢いやり方で、敵から守るよりは、よそ者から守る、プライバシー、あるいはコミュニティーのまとまりを守るという意味です。迷宮都市は非常にすぐれていると思います。だから、地中海の世界都市は迷宮都市が多い。

17、18世紀ぐらいになると、それは変わっていく。これだけ観光地化した都市でありながら、住民しか行かないような飲み屋、レストランが結構多い。こういうところには観光客がめったに来ない。

東京はバブルのころに、「インタナショナルTOKYO」と「ドメスティックTOKYO」に分けざるを得ないような議論がありました。アクロスの編集室が出したおもしろい本で、都心はインターナショナルで、外側はドメスティックなどと書かれている。

 

ホスピタリティーと平和外交

 

ベネチアにはホスピタリティー、平和外交など、よそからの人を意欲的に迎え入れる政策、あるいは文化の風土があります。女性だけのレガッタがあります。もともとは16世紀に、フェラーラという街のお妃と、その娘、イザベラとベアトリーチェを招いたときの歓待のイベントとして行われた。それがもとで、今でも女性のレガッタが行われる。カナーレグランデとかサン・マルコ広場だけではなく、劇場も、あらゆるものを使い、貴族の人たちは館、別荘を宿泊施設に提供する。街を挙げて歓待して、それが平和外交につながることをやりました。

 

ヒンターランド

 

ヒンターランドとのつながりは、重要なテーマではないかと思っています。共和国の領土は、広く大陸のほうに広がっていた。パロバ、ベローナ、リチェンターなど。みんな固有の文化をつくった。歴史があり、ベネチア共和国のテリトリーとして入ってきて、また独特のものをつくる。それぞれの都市の人たちは自分の固有の文化とベネチアの文化と両方を誇っている。その時代に栄えた産業が、みんな特化している。それはベネチア共和国の政策でもあったのですが、それが現在、イタリアのファッションやデザイン、グルメの分野で元気がいいベネト地方です。今花開いている。

 

栄光時代の蓄積

 

ベネチアも衰退して、世界都市から凋落してしまったのですが、人口は、大陸のほうのメストレも含めると30万人ぐらいです。30万人の都市でまだ世界都市性を持っているのは、なかなかやるなという感じです。実はリアルタイムで世界とつながっている。飛行場が近いので、ホテルまで30分でモーターボート、タクシーで入れる。だから、ヨーロッパの主要な都市からホテルまで、待ち時間も入れて3、4時間で行けてしまう。これは大きい。頑張れば毎週末行ける。リピーターが多いのは当然です。別荘としてセカンドハウスを買う人も多いですから、不動産価値は非常に上がっています。

リアルタイムにつながっていながら、ここへ来るとまったく異次元世界を体験できる、リラックスできる、インスピレーションを得られるということで、非常にいいポジションにある。しかし、ベネチア人自身は、ディズニーランド化することを非常に心配して、観光ばっかりになるのはいかんと言っています。

いろいろなイメージを今も発信していて、これはカナーレグランデ沿いのパラッツグラーシと言って、フィアットが買って修復・デザインし、今は大きい展覧会を開く。いい展覧会が多くて、毎回話題になります。準備期間も長く、展覧会は半年継続する。だから、リピーターがわざわざこれを見にベネチアに来る。今は焼けてしまってないが、劇場がそうです。いいオペラがしょっちゅうかかるので、それを見にいろいろなところから来ます。展覧会はあちこちでやっていますので、話題になることが多いですし、そのためにも来る。

カーニバルで、これがまたちょっと独特の文化をつくっている。ベネチア人自身は今や飽きても、観光客がどんどん来る。一番多く来るのが、これまで完全にオフシーズンだった2月。都市計画上、非常にうまいことやっている。行政もサポートしています。

これは特殊ですが、ビエンナーレ、映画祭、あるいはコンベンションシティとして、シンポジウム、学会、イベントの開催の頻度が高い。

 

 

 

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