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これには、造船技術と建設技術を組み合わせて考えると可能性がある。霞ヶ関ビルぐらいのものは、造船では3カ月から4カ月で1隻進水するというスピードなんで、陸上でつくる期間の6分の1ですむ。それでも3年はかかるわけです。海の東京は建築を造船所でつくって曳航してきて垂直に立てていけばものすごいスピードで海の東京をつくることができる。少くとも、陸の東京を変えていく力になる。これには別の実例があります。地中海のコートダジュールの海岸都市は10年ぐらいで立派な形ができ上がっています。それから、アメリカの東海岸のマリナ都市は、同じく10年ぐらいでできています。なぜそう早くできるのかと言えば、水域を利用して、海岸沿いに施設をつくって、交通を海陸でやり、居住環境をつくり、文化施設をつくる。そういうことが非常に計画的にできる。だから、臨海都市は非常に短期間で、リーズナブルな経済的コストで、しかも美しい開放的な、ゆとりのあるいい環境の都市ができ上がる。多分、東京でもし都市づくりをやるとすれば、副都心などたくさん計画はありますが、そんなことをやっていたのでは、3,000万のスケールを対象にするには少し時間がかかりすぎる。東京湾全体を加えて1つの都市づくりということで考えればできるのではないか。

臨海都市づくりの研究があります。造船と金融と、建築(私どもの事務所)の3者が一緒になって、シャローウォーターの、東京湾ぞいの計画をやったものです(1963年)。

海の東京では1958年に、フローティング都市を計画して、それからあと、潜海型の海上都市のつくり方でつづけまして「KICプラン」ができました。

KICとは菊竹と、Iは石川島播磨重工業、Cは長銀(当時)です。1975年にはフローティングのメガフロートと言って、最近実験をやっている、ああいうものの先行プロジェクトをやり、これは防災の基地の計画でした。それからアクアポリスがあります。その後、フローティングのホテルで、これはサウジアラビアの計画。

それから、つい最近のモナコの計画で(92年)、マクロエンジニアリング学会で、MITと一緒に考えました。それから、マクロエンジニアリング学会の世界的な組織の中でいろいろスタディをしたものがありますが、相当やれる能力が日本にあるということがわかりました。

鉄、セメント、ガラスの生産量はとにかく世界一になって、造船も自動車も機械産業技術も、ITの関係技術も、光ファイバー、テンションワイヤー、こういうフローティングを係留する技術は世界一です。島と島をつないで係留すれば、費用もかからないで済む。こういう周辺技術がみんなでき上がっている。これは日本だけです。ですから、大変楽観的な見方ですが、多少はやれるのではないか。

陸上の東京に対して海の東京、港湾と空港と、新しい都市の連携です。

 

3000万人都市の環境

 

老人パワーも大きい。マクロエンジニアリング学会では、いろいろな可能性の議論をつづけているわけです。4、5年前にパリでやりました国際会議では、SPSというソーラパワーを地球上に送ってくる計画の研究で、日本から東大宇宙研の長友さんが出られて、太陽のエネルギーを月で受けて、それを衛星に送って、衛星から地球上に送電する。これをマイクロウェーブか、レーザーで送る。そうすると、開発途上国は原子力を考えなくても、このエネルギーで十分やれる。そんなことを世界の学者と一緒にやっています。

大変楽観的な話ばかり申し上げましたが、悲観的な見方では、日本の物事の決定の鈍さ、政治経済文化の組織が今、麻痺状態にあるということなどがあります。ですから、どういうところから、どういうふうに、だれがこれをやるかということは、全く見通しが立たない。日本はだんだんよその国に追い抜かれて、能力を発揮するチャンスがないのではないかということです。

もう一つは、災害破滅型というもので、地球温暖化で大分海水面が上昇すると言われています。今から50年後ぐらいで、おおよそ1mから3mぐらい上昇する。3mというのは大きい数字を提示しているのですが、東京の江東地区とか、臨海部の地域がかなり水没することになるのです。

 

 

 

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