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それに加わってきているヨーロッパのユーロの問題も急激に浮上してきているので、対立的な関係になってきているのではないか。

ここでどういうことが環境で問題になるか。欧米と日本またはアジアとの関係ですが、循環再利用という更新性を持った文明の考え方に対して、蓄積型のヨーロッパ、あるいはアメリカの考え方と、そこに相当大きな開きがあるのではないか。これを果たして新しい人工の材料で、ガラス、鉄、コンクリートとか、そういうものでどこまで実現できるのか。それはこれからの世界的課題なのではないかと思っています。

世界都市の競争という点では、今、注目されておりますのは、ニューヨークに対してパリが少し前まで非常に大きく進展していまして、パリが指標になると思われていました。フランスという国は、フランス全体がレベルが高いというよりは、一国全体がパリに集中している。この集中力が、ほかのヨーロッパの国と違って非常に大きな印象を与えているわけで、都市計画にしても、建築にしても、そのほか技術的芸術的なものの投入という意味、そしてその成果としての環境・都市・建築に総合されますから、この総合力では、やはりパリが大きな関心を呼んだわけです。

パリの都市づくり、環境づくりには、イタリアとか、そのほか外国の建築家やアーティストを大いに起用して、文化を蓄積してきた。そういう意味で世界の注目を浴びている。

それから、英国がロンドンで同じように大きな成果を上げてきている。テムズ川の周辺に文化施設を集中したり、つい最近はミレニアムドームをつくったり、あるいはラングドッグ計画をやったり、ロンドンが注目を浴びてきています。これに対して、今、東西ドイツの統合によってどこまでベルリンの中心計画ができるかというようなことが話題になっています。

 

陸の東京と海の東京

 

一方、東京をみますと、果たしてどこまで東京をやれるような状況になっているかというのは大変大きな問題で、東京計画については、いろいろな方が今まで、後藤新平をはじめとして計画があったんですが、震災・戦後の機会も空しく全部挫折している。陸上における東京の集積は相当複雑な利害関係とか、政治、経済、文化の上で複雑な関係を持っていて、なかなか陸上東京は少し時間がかかるのではないか。そこで計画をやっていますのが、高さ1,000メートルというハイパービルのプロジェクトです。とにかく1つの区を1つのビルでつくってしまう。地上は緑化したり文化的な施設だけを残して考えてみたらどうなるかスタディーをしてきましたが、ネックになっているのは航空路です。高い建物は飛行機の航路に当たって障害になる。そのために極超高層はできない。しかし、今の人口集積で、都市問題を解決しようと思うと、どうしても極超高層化が必要で、縦型の交通で時間、距離をうんと圧縮するコンパクト・シティを考えないと難しいのではないか。

もう一つは、交通問題でも、環状をもっと強化するとか、大深度地下の交通ネットワークをつくったらどうかということが出ていますが、日本の社会システムから言っていずれも時間がかかる。10年から15年ぐらいの間にやらなければ、効果がないのに、早くて40年から50年かかってたのでは意味がない。それにしても、やれるところからやるというのはとても重要なことです。

それで「海の東京」が浮かんでくる。行政的に東京湾を千葉県とか神奈川県とかに分けていますが、こういう行政区分を外して考えれば、「陸の東京」に対して「海の東京」がある。そうすると、この海の東京では、交通路のネットワークは、海底地下トンネルでやろうとすれば、できないことはない。これは日本がお得意の技術を持っていますから、工事は簡単にできる。

漁業権などの問題もありますが、もし東京湾というエリアを1つの新しい首都のエリアと考えれば、その中に、森をつくったり、湖をつくったり、水路をつくったり、そこに都市をどうつくっていくか。

 

 

 

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