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しかし、そういうものを私達一般の人たちにわからせてくれないというのが問題です。空気とか水なんていうものは、どのくらいきれいで、どのくらい汚染されているかということを定量的に教えてもらったことがありません。水を売っているが、その水がどのくらいきれいなのか、不純物がどのくらい入っているかなど全然わからない。安全研究と評価できる機関をぜひつくっていただき、安全情報データベースの構築とその情報を提供できるようにしていただきたい。

どのくらい空気がきれいなのか、空気のきれいさの度合いというものを工学的に決めておくべきです。日本は湿気の文化と言われていますが、湿気があるから、日本の畳ができたんだという話があります。しかし、湿気というものの科学が確立されていないようです。空気とか水とかのきれいさの測定が手軽にできないものか。PRTR (Pollutant Release and Trans for Register)「環境汚染物質の排出移動登録」制度の導入という問題もあります。

 

ビルの性能は使い勝手次第

 

東京都においても災害情報網の整備をすべきだと思う。災害のための情報収集と情報伝達には、3つのステップが考えられる。第1は災害前の予測・予知の精度の向上、第2は災害直後の情報の速報性、広域性、正確さの問題、第3は災害避難情報の避難場所と避難路の指示の問題とがある。避難路を指示するのには、ニューヨークのようにX軸とY軸が、アベニューとストリートではっきりしているところは、そのデジタル情報を与えられるわけです。そうじゃなくて、ボストンのような曲がりくねっている路の多いところでは、お堀に沿って走れとかいうようなシンボリックなアナログ情報で避難路の指示をした方がよい。

東京にも少し前までは都電通りがあったが、都電がなくなりましたので、また都電を増やしたらおもしろいんじゃないかと思います。ぜひ都電通りを復旧していただけば、昔を懐かしむ者もいるし、排気ガスが少くなりますし、避難経路にもイメージ情報を与えることができる。

渋谷のランドマークは忠犬ハチ公ですが、東京の主な場所にランドマークのないところはつくるべきである。若者でもわかるような、そういう土地の名所というものを意識的につくって、それを使って避難路を指示すべきではないかという感想をもっております。

昭和54年頃、巨大ビル管理システムという研究会をつくりまして、私が委員長になって、菊竹さんに手伝ってもらったことがあります。巨大ビルと、地下街のコンピューターネットワークとか、セキュリティーの問題をやったのです。ビルというのは、建物のきれいさとか、建物の大きさとかいうので宣伝をするわけですが、建物の使い勝手がいいという話は余り聞いたことがないという話をしたことがあります。その時菊竹さんはビルの使い勝手がいいというのはビルの性能だというんです。工学においてこの機械は使い勝手がいいということを性能がいいといいますが、ビルの性能というのはそれまで聞いたことがありませんでした。ビルの性能というのは、どんなに設備がいいかという問題ではなく、それをいかに動かすかという管理、運用の問題です。いまだに、このビルは使い勝手がいいとか、この病院は使い勝手がいいなんてあまりいわれていないのです。私は、入院経験が22回もありますが、この病院は使い勝手がいいというものは数少ない。

大きな病院で特にいけないのは、エレベーターとかエスカレーターのつけ方が非常にまずいという面です。特に手術患者のエレベーターと一般患者のエレベーターと、それから見舞いのエレベーターが渾然一体となっていますが、非常にまずいことのように思われます。大学の建物は5階で、歩いて階段を上るというのが常識でありましたから、学生のためのエレベーター、エスカレーターの使い勝手が非常にまずい。日本の首都高速道路もそのような欠点がありまして、1車線で事故が起きると、反対車線までそれを眺めてのろのろ運転になり渋滞します。入口はそのままにして出口を増やすと、自然解消で2割位は助かるんです。

首都高速でどこで渋滞するか、わかっているんですから、箱崎の辺とか、ニューオータニの前あたりで出口をつくってパッと出られるようにする。

 

 

 

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