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佐貫 ある外資系の企業が女性の化粧室を大理石で全部作ったんです。何で作ったかというと、いいお嬢さんを採用したいからです。そうしたら、ほんとうに来るようになったという。JR東日本のお手洗いは汚さ過ぎる、1日に何回でも洗って、トイレの便器をかえろと言った。大分きれいにはなっていますが、まだまだです。

 

古川 公園のトイレはきれいになりました。だから、ホームレスが住みついている。水が出て、屋根はあるし、なかなか快適です。

 

平山 上野公園のトイレがよくなると、ホームレスがトイレの周りに住みついちゃう。

 

菊竹 自治体によっては、公園の便所をつくらないところがある。なぜかというと、そこで嬰児殺しだとか、いろんな事件が起こるんです。トイレをやめて事件が起こらないようにするのは、ちょっと短絡的ではないかと思う。

 

高齢者が楽しく暮らせる東京とは

 

平山 次に、「高齢者が楽しく暮らせる東京」とは、という話に入ります。私が高齢者ですので、私が楽しく暮らせるためにはどうしたらいいかという気持ちで話します。

今、70歳以上を高齢者というのか、65歳以上を言うのかわかりません。大体高齢者と老齢者というのはどう違うかもよくわからない。今の高齢者というのは、大体亭主関白時代に生きながらえてきた。だから、亭主関白の生き方をそのまま守りたいんです。しかしながら守らせないような環境にどんどん変わってきています。亭主関白時代の終焉です。

孫の面倒を見ることを喜びとしようと言っている人がいますが、私にとっては喜びじゃない。孫の話をすると、早く老けるといわれていますが、孫の写真を持っている同期生がいると、「おまえは老けてきたな」と言っております。

ところが、最近、私も、75歳を過ぎたら、ついに孫の行く末が気になってきました。息子や娘には、いわゆる教育者の「紺屋の白袴」で、教育は一切関与しなかった。ところが、孫に対して急に気になりまして、孫に自分の時代のことを語り部として伝えていきたいという気持ちになってきました。私は、戦争のときの苦しさなんていうことは余り話したくないのです。昔のこういうおもしろさ、こういうよさというのを語り部として孫に伝えたい。

早稲田大学にも歴史編纂という部署がありますが、語り部というものはない。村井総長と後の清水総長と早稲田の新学部所在地を幕張(千葉県)か所沢(埼玉県)かを争ったときの裏話なんていうのは大学の歴史に書けないんですが、語り部としてしゃべりたいというのがあります。1周り下の60歳前後が、今の奥島総長の年頃ですが、その年頃の教授達にしゃべると問題になると思います。30歳前後ぐらいの先生方にしゃべると感心して聞いたり、おもしろがったりする可能性があるんです。ですから、弟子もそうですが、孫弟子達に語りたい。

うちの家内は姑に仕えて、嫁に気を使っておりますから、それじゃ二世帯住宅にしないほうがいいという。家内の友達もみんな二世帯住宅は嫌がっています。しかし、その中の何人かは、二世帯住宅に住めば孫の顔が見られていいという人もいます。どこかの調査を見ましたら、アメリカでは、孫に時々会えばいいという程度の人達が多くて、日本では、しょっちゅう会いたい人が多いという。周辺が変わったんだから高齢者意識の自分から意識改革をしたほうが、高齢者は逆に楽しくなるだろう。

老人はどうも出しゃばり過ぎてるから嫌われるという面がある。おせっかいやきで出しゃばるから、嫁からも嫌われ、息子からも嫌われる。老人は昔の自慢話はやめ、若い者に花を持たす。若い者から見ると、昔の自慢話というのは非常に嫌らしい感じがする。そこで、「若いときにこういうことをやって、こういうことはうまくいったぞ。今の若いやつは何やってるんだ」ということを早稲田大学へ行って私のような老人が言っちゃいけないと思いましたので、尾島学部長から教授会のときに講演しろと言われたのですが、余り気が進みませんでした。私は孫弟子ぐらいの30代、40代の年ごろの人を集めて、1月に1回パーティーをやっている。

 

 

 

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