それで初めてシステムとしてでき上がる。それがある程度成長すると美しさという芸術性が問題になってくる。それは技術文明のほうでして、文化というのはどうも違う。科学技術の進歩とは違った芸術の分野はよくわかりません。知性よりは感性が優れている人をどうやって選び出せるかというのはわからないところです。
芸術というのは感性の優れた人を選ぶはずですが、芸大の入学試験を見ると、感性が優れていても、英語とか何かが優れていないと入れないという話を聞きました。早大の建築も昔は感性が優れた人がいたんです。それは感性が優れていたから入れたんじゃなくて、昔は入学試験が易しかったから、芸術性のある人が、感性のある人が早稲田の建築科に入れたんです。早稲田大学の建築科の入学試験が難しくなって、今の若い人は多分芸術性がなくなってきたんじゃないかと思われます。
それで、芸大からだんだん芸術性がなくなっていく。芸大では、批評家は出るんです。芸術の批評家とか、芸術の歴史学とか、そういう人は出てくるけれども、ほんとうの独創的な、世界的なニューモダンアートは出ないということを言っているんです。早稲田もやはりそうで、だんだん入学試験が難しくなって、早稲田大学の理工学部は個性がなくなってきた。そこで早稲田大学でも芸術性のあるものを教えるほうがいいと思うわけです。
後で外国人の話が出てまいりますが、芸術性があるかないかわからないけど、若い外国人、特にアジア系の若い人をどんどん取り入れる。そういう人たちを、芸術専門学校に入れて、そこから優れた人達を無試験で大学に入れるということをやる。そういうアジア系の若い人たちが住みやすくするのが非常に重要ではないかと思っています。その住みやすくするというのが、後でまた外国人を受け入れる東京につながるわけです。
世界に通じるために
では、東京の芸術的なものが世界に通じるためにはどうしたらいいか。カンヌ映画祭は金はどのくらいかかるかというと、あんまり金はかかってないようです。グランプリも大した金ではない。早稲田大学の一大学ですら出せるぐらいの金で賞が出せる。ただ、そこに権威づけるということがほしい。早稲田の映画祭をやって、仮に同じような金を使ってグランプリを出して、早稲田グランプリと言っても、だれもありがたく思わない。ありがたく思うにはどうしたらいいかということを考えなければならない。これから東京映画祭、東京アニメ祭、東京祭というのに権威づけをぜひやっていただきたい。権威づけするには、世界の一流の人、世界に通用する人を呼んで審査員にする。日本だけが審査員では、全然だめだろう。日本人は一人ぐらいいればいい。
新しい近代文化としての東京文化の創造性は、アジア系の若い外国人を日本に住みやすくすることから生まれる。ニューヨークのSOHOというような地域の環境がどうしてできたのか。
東京文化の創造性は、これからは女性に期待すべきだと思う。女性というのは知性よりは感性に優れている。知性のある女性もたくさんいると思いますが。女性は感性で生きていると思うので、感性の優れた人が芸術家として努力して、もしだめになっても、女性というのは男に頼って生きればいいというのが、我々男社会の言い分であります。しかし、これからはそうじゃなくて、どうも女性に頼って生きていく男が出てくるのではないか。女性に新しい文化の創造をゆだねると、男がだんだん貧弱に見えてきそうな気がします。
外国人を受け入れる街・東京
外国人をいかに受け入れるか。空港問題が重要で、成田と羽田と調布の3つを国際空港にしたほうがいいんじゃないか。
この国際空港化と成田、羽田、調布の3つを結ぶ交通機関、これらの国際空港と東京の中心をどううまくつなぐかが問題です。また空港の中に、空港の下か何処かに、国際会議ができる場所だとか、あるいは遊び場をつくる。そこは入国していませんので、税金は取られなくていいことにする。一種の治外法権の場所になりますから、いっぱいつくって、しょば代として何%かをピンはねすれば東京都は大変もうかるのではないかと思います。