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それから隅田川、荒川系統と多摩川系統を結ぶ運河だけでも大変な船遊びができるのではないかと思っているんですが、私のは遊ぶほうの話で、それを非常に役に立つ話と両方うまくかみ合わせるとおもしろいという気がいたしました。

 

菊竹 都市の開発のときに運河をうまく使ったというのは、サンアントニオという都市です。やはりループ状態に都心部を掘って、そこに公共施設なんかが立地しているんです。

 

古川 水はどこから引いているんですか。

 

菊竹 それは川から引いているんです。

 

古川 コロラド川みたいなでかい川じゃないんですね。

 

菊竹 大きい川の支流になっています。そこから引き込むときにゲートでやりますから、水位が一定になるんです。だから水運ができるわけです。その水運は非常に底の浅い船を使って、とにかくほとんど同じ目線のところでレストランでも、公共施設でもいろいろなものが眺められる。ちょっとした公園の施設なんかもよく見えますから、ものすごく親近感があって、みどりと水の人間的な環境です。それまでは全く荒れ地で、サンアントニオというのはたしか何とかの砦というのがありましたね。

 

古川 アラモの砦。志賀重昴の書いた顕彰碑があります。

 

菊竹 アラモの砦で南軍と北軍が戦争したところです。だからずっと取り残されていたところなんです。それを、運河も大した運河じゃないんですが、幅はせいぜい8mか10mぐらいしかないような。ですけれども、それをやったために、その運河のところだけは照明もついていますし、わりあい人通りもあって大変活性化しています。

水をもっと大切にする。堀をやたら埋めて道路をつくったりして、特にいけないのは、暗渠にしたほうが空間利用上いいなどといっているが、こういう考えが毒しているんじゃないかと思うんです。

水面のつくり方なんかも、神田川なんかでもそうですが、直角に土手をつくって、浅はかな知恵でぎりぎりまで利用するということをやったんです。だけど、やっぱり緩傾斜で土手まで線化していると、川が増水しても、川幅がちょっと増えるだけで別にどうってことないんです。ところが直角になっていますから、都市洪水が起こるんです。

江戸川橋なんか信じられないほどです。どこも全然浸水していないのに、そのところだけ半日とか1日ぐらい人が通れないとか車が通れない冠水が起こるんです。だから水の扱い方というのは、現代都市工学の過信があるような気がします。

 

古川 目黒川だって、中目黒のあたりで随分溢水して、床下浸水、床上浸水しました。あれは改修したが、相変わらずコンクリートでのっぺらぼうにしているから、今度大雨が降ったらどうなるんだろう。

 

菊竹 それはだめです、多分。

それで、それを避けるために地下に今度トンネルをつくって、そこに増水した水をためるというでしょう。これはもっと危険です。どのぐらい効用があるかなんていうのは専門家以外全然わからないブラックボックスにするから、全くひとりよがりの公共工事になってしまう。

だから、景観づくりを一緒にやりながら、なおかつ川の水のコントロールをやっていくという、そういう知恵はやっぱり江戸時代のほうが知恵が上だったような気がします。

 

中川 船遊びの点でいっても、これはだめです。波がいつまでも寄せて、複雑になっちゃって酔っちゃいます。

 

平山 やっぱりなだらかに土手が上がらないと。

 

中川 本当は土で草が生えていて、吸ってくれるというのが一番いいです。

第2室戸台風で浸水したのに懲りて無粋なコンクリート防潮堤をつくったのが、この頃やっと植栽が生えましたと言ったら、ばかばかしい工事をしたものだと叱られた。100年に1回ぐらいあふれたって水辺の風情のほうがいいじゃないか。

 

役に立たないテトラポット

 

日下 東京に大災害が来たとき、復旧工事をまた役所がやっちゃいかんということなんです。それも神戸へ行って如実に感じるんです。

 

 

 

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