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もう1つ参考になるのが北米の大運河です。左のほうがハドソン湾のジェームズベイ、ハドソン湾に盲腸みたいにくっついている小さな湾がありまして、それがジェームズ湾。でも、東京湾よりはるかに大きいです。

そのジェームズ湾を閉め切って、ジェームズ湾に流れ込む川の水をためて、ジェームズ湾全体を淡水湖に変えるというプロジェクトがあります。わかりやすくいえば東京湾を観音崎のところで閉めて、荒川、江戸川、多摩川、これでもって東京湾を淡水湖にしちゃうわけです。

淡水湖からあふれ出る水を還流させて、ポンプで上へ引っ張る。上というのは、五大湖がてっぺんのところにずらっとあるわけです。五大湖の水が今千上がって供給していた大西部から中南部のほうの平野、穀倉地帯へ給水ができなくなっちゃって、しようがないから南のほうではスプリンクラーで地下水を引いていた。今、くみ上げている水は石器時代の水になっちゃっています。

東京平野ではまだ室町時代の地下水を使っています。でも、これも急速に平安時代へ近づいています。飛行機から見ると、みんなからからにひからびちゃったまんまの砂漠になっています。これを何とかしようというので、五大湖を蘇らせて大運河を新たに穀倉地帯に張りめぐらすという計画が出てきているわけです。

この図の上の水たまりがハドソン湾。そのハドソン湾のところを閉め切る。それには中小河川がいっぱい流れ込んできているから、その水を全部集めてここで淡水湖をつくる。その淡水湖をずっとポンプアップして五大湖へ持っていく。五大湖の水をこうやって運河をつくって、穀倉地帯に給水する。

じゃポンプアップはどうするか。最初のころは普通の発電所や原子力発電所でモーターを動かす電気で供給してきた。これで上げ、水がたまってくると、そんなに大量に上げなくてもいいというので水を逆流させます。ダムをあけて放水します。それで水力発電ができる。

斎藤英四郎さんが、信濃川をせき止め、その上のほうの大きなダムで発電し、ここにたまった水を谷川岳から関東へ流しちゃって、関東の水不足を解消しようじゃないかと提案しました。これと似たような、スケールは小さいけれども、そういう発想だったんです。日本ではだれも相手にしなかったので斎藤英四郎さんは随分嘆いていました。彼の中にはちゃんと関東平野の危機というのが見えていたと思うんです。まあ、今でもご健在ですけれども、あの計画はいつの間にか消えてしまいました。

そのぐらいのスケールでやらないと、東京の問題は結局のところ解決しないんじゃないかなと思っています。

一応今までのところはマクロエンジニアリングそのもので、水周りのことを処理するとすると、それだけの巨大土木事業を考えたほうがいいということになるんですが、しかし、それで多摩丘陵に灌慨もでき、それから160m、130mの湖の水を使って、それを等高線沿いに引っ張ってきて、そこは運河として通行ができるようにする。それから100mのラインまでどんと落として、多摩丘陵の突端のところまでうまく引いてくれば、そんな段差がなくて通行もでき、水も確保できるわけです。

中国の三峡ダムの場合は200mのダムをつくるわけです。その200mを1万トンの船が通れるように7段の設計でロックポンドを連ねて、だんだん上がっていく。1本は200mを一気にエレベーターで上げ、リフトで上げ下げする。そういう、船を水に乗っけて、エレベーターで上げ下げするというのを中国が考えている。

 

バイオ・エンジニアリング

 

日本の技術力でできないはずがない。それを日本は何も考えようとしない。いかに小さくなっちゃっているか。萎縮した、もう末期症状です、この国は。

そういうロックポンド式のダムというのは、ヨーロッパだったらば南フランスヘ行くと見事なものがあります。マルセイユからずっとリヨンのほうまでつながっている。ツールーズを経由する。僕もそこをクルーズさせてもらったことがあるが、非常に優雅な、ゆったりとしたヒマワリ畑の中を等高線のまんまで進んで、それからぽんと下がって、大きなバージがそこで行き帰りするというようになっています。

 

 

 

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