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もしあのときすらっとつながっていたとしたならば、東京のオフショアプランニングも軌道に乗ったでしょうし、山一とメリルの提携も、平和裏に進んだと思うんです。日興とソロモンの関係のようなぐあいに行ったはずなんだけれども、どういうわけか山一が犠牲を強いられた。

僕の調べでは、山一は一番ヤマトナショナリズムの会社で、伊勢の神楽の番札をあそこは持っていて、それをどうしても手放したくないと頑張っていたのがたたかれた。その民族主義を打たれたと解釈しています。そこから日本の民族派の資本は片っ端からやられていった。

その津波はもう日本を完全に席巻したと言ってもいいでしょう。長銀のあの姿がそれを象徴していると見ています。

そして、金融センターをおつくりになるのなら、その場合は、岩盤もしっかりし、標高も確保されている多摩丘陵を植民都市にしたらいかがですかという話になる。

東京は東京湾が中心になって水浸しになる。2番目の日本列島の衛星写真を見れば明快で、もう開発し尽くされた東京、関東平野は真っ白にしか移らないんです。これに津波が押し寄せてくると、ここが水浸しになっていく。今の緑の部分だけが日本で水面上に顔を出すところになるだろう。

何とかそれを食い止めようとするなら、大阪湾の場合、長大な防潮堤をつくれば、何とか生き残れるかなと思われる。大阪湾の紀淡海峡のところを防潮堤で閉め切って、明石大橋をてこにして防潮堤をつくっちゃう。そうすると大阪湾は守られて、淡水湖に切りかえることができます。

淡水湖として琵琶湖と大阪湖があって、じゃ淡水湖にしたとき、たまってくる淡水をどうするかというと、それはポンプでしかるべきところに給水するということしか考えられませんが、東京はもうどうにもならない。九十九里浜から水は押し寄せてくるし、これはもう水に任せるしかないだろうということです。

 

荒川が決壊したら

 

さっきの地図では、5m海面が上昇しただけで真っ赤になっていた部分が、この白いところです。

一応緑で見えておりますけれども、ここも大宮のほうから何からみんな水浸しになっていく。いろいろなことを考えても、防波堤とかドレッジングするクリークみたいなもの、あるいは運河というものもこの関東平野では無理だと考えたほうがいいだろう。そうすると、そこへ張り出している多摩丘陵でかろうじて食い止め、秩父連山のあたりで新しい巻き返しを図るのが賢明ではないだろうか。秩父だって大昔は海底だったわけですから。

建設省(現国土交通省)のシミュレーションで、荒川が決壊した場合どうなるかという図があります。まず江東区が完全に水没、そして隅田川、荒川の帯はもうだめ。しかもそれは表面に水がたまっているだけじゃなくて、地下鉄に水が全部入っていっちゃって、地下鉄が水浸し。それから主な建物、丸の内までも含めて、その辺のライフラインが地下にあるものはだめということになります。機能停止ということがもうわかっているわけです。

だから今のうちにそういうところは、ハイパータワー、スーパーシティに切りかえておかなければ話にならない。それでも気がつかないでいるというのは、もう東京都心部を捨てる、捨てなさいという天のお告げであろうと思うわけです。だからこそ、頭脳部を司る大学、高等研究期間がどんどんここから外へ出ているんだと解釈したほうが早いんじゃないか。

 

ウエストサイドからの蘇生

 

そうすると、多摩が今は知的な集積度が最も高い。関東財務局(当時)と通産局(当時)がいろいろと動いて、特に通産局が東京都立大学と組んで多摩活性化協議会というのを起こしました。これが見事に我々の多摩ルネサンスが長年やってきたエリアを網羅して、もう少し埼玉県の西部のほうと組んだ広域多摩という概念で今、予算もつけて、中小企業とも組んで、次の時代の新しいシリコンバレーをつくりつつあります。

 

 

 

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