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これからの問題は、空港へ出る回線の出口が他ルートでなければいけないわけです。何かあれば、何分の1かは死ぬかもしれませんが、それでも生き残っている空港機能のあることがこれからの問題ではないか。

 

佐貫 危機管理の問題、セキュリティーです。

 

未来技術はエレクトロニクス

 

古川 話を戻します。日本の先端科学技術の研究のセンター、これをぜひとも推進しないと、もう次の世代では日本は借金国に落ちぶれます。何も輸出するものがない。ですので、ネタニエフが首相のころに日本にやって来て、我が国には世界的な特許が1,500ある。日本には、これを工業化するだけの工業力がある。手を結ぼうじゃないかと。完全にばかにされている。それはなぜかといったら、やっぱり非常に独創的な研究が育つような素地があるわけです。

1つは日本人の特性もある。大きな目でものが見られない。

日本の最先端を先頭を切ってやったのがつくばです。やっとこのごろ都市機能を持ってきましたが、そういう経過があるから、京阪に学園都市をつくることになったとき、私は真っ先に、当時の関経連の会長に、2つの提案をしました。1つは、空港をつくる。空港ができれば、小型機かヘリで直接行けてすぐ会議ができる。

もう一つは進学塾を持ってくる。なぜかというと、赴任してくる先生には家族がある。何が一番心配かといったら、子供がどこにも行けないことです。地元の高校に行ったって話にならない。駿台でも何でもいいから予備校を持ってきたら、という乱暴な提案をしたんですが、全然通りませんでした。関経連は、まじめ一方ですから、みんな大笑いしておしまい。しかし、それをやらない、しかもショッピング・センターがない。そうすると、外国人がいるんです。彼らは、人里離れたところで、都会に遊びに行かなくてもへっちゃらなんです。好きな仕事ができればいいので、窓がなくても、扉さえあったらやっています。

同じことは、北陸先端科学技術大学院でも言えます。私はこの4年間ほど、学術振興会の未来開拓の仕事に携わり、委員長もやっているので、あっちに行ったり、こっちに行ったり。これが、また、ほとんどの研究の中核は外国人です。しかも、あそこには今話題のDNAチップで、アメリカと先端争いができるだけの力を持った研究所なんです。ところが、研究所の敵は、アメリカに100あるんです。日本は北陸センター1つ。これでは勝負にならない。数年たったら完全にやられてしまいます。

問題はもう一つ、バイオについては大きな誤解がある。アメリカのバイオというのは、これは専門用語ですから、生物実験というのはラテン語でイン・ビボ(IN VIVO)、生きたものの中という意味。つまり、切ってみたら、こんなに化膿していたとか、腫瘍があったとか、血管がつまっていたとかいうのがイン・ビボです。それから、試験管の中でこうして振ってやっているのがイン・ビトロといいます。ビトロというのはガラスのビトロです。これは、細菌を培養するとか、酵素の反応を見て、だからこうなっているんだというのが、イン・ビトロの研究。

今は、シン・シリカになったんです。基盤の上で。マイクロ・マシンの基盤、シリコンの基盤の上で、DNAチップのようなものです。例えばの話、こんこん咳を出だしている老人がいて、肺炎かもしれない。どうも肺炎らしい。そうしたら、血を1滴取って、ぽんとそこに置きます。この細菌は何型の肺炎双球菌であって、抗生物質のどれとどれが効くか、というのがすぐその場でわかる。培養などしなくていい。それをやりさえすれば、すぐに助かるというのが、未来図の1つとして書かれているんです。

もう完全に日本はやられているんです。日本では医者とか生物学者がやっているが、アメリカでは一人もやっていない。全部シリコンバレーでやっているんです。そういうところは全く間違っています。大阪も、美濃の山の中に学園都市をつくって、そこにバイオ研究センターをつくる。やっているやつはみんな古手の大ボスの生化学者ばかり。こんなのが戦争になるはずがない。ぜひとも、まず文部省、通産省、科学技術庁が一緒に考えてほしい。未来の技術はエレクトロニクスしかない。

 

 

 

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