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そしてアジアがこれから脚光を浴びてきてくる。そういうことが、日本のフローとストックのスケールの大きい経済が東京の地価の高水準化を支えているのではないかと考えられます。

 

東京の機能

 

そこで、〔表9〕で東京の機能の全国シェアを見ますと、人口は東京都市圏で25.9%ですが、大学生の数は40%、卸売販売額は40%、貸出残高は50%、コンピューターの納入金額も50%、そして情報サービスになりますと64%と知識・情報・中枢管理機能・技術開発機能のシェアが一段と高くなります。この計数を直視するかぎり東京、大阪、名古屋の3大都市圏といった発想ではなく、かつて坂本二郎教授が伊藤善市教授、加藤寛教授、小生に東京・その他といった「一極集中パターン」化することを強調したことを思いだします。そういう意味で、東京をどうするかということは、日本をよくすることと非常につながるんだということを、私は強調したいわけです。

では東京の中で空港はどうなのかを示すために、〔表10〕を見ていただきたい。東京は羽田と成田、大阪は伊丹と関西、名古屋は小牧というのが現在の姿ですが、空港の乗降客数を見ますと、第1に年々歳々増えている。羽田空港は、1997年で4,400万人でかなり頭打ちになっている。しかし、新Cランがオープンしたこと。さらに新しいBランが港区の上空を飛ばないで済むように改良されましたので、開港時間を長くできるようになります。新東京国際空港(成田)は2,700万人をオーバーしましたので、羽田と成田で7,100万人以上の利用客スケールをオーバーしている。

それに対して、大阪の伊丹は国際線がゼロで、新関西が1,100万人ですから、国際線の利用客は東京の3分の1ぐらい。そういう点からすると、地方空港をつくるのも結構ですが、首都第3空港を一日も早くつくることが、大きな課題ではないかと考えます。と同時に、成田空港のD・Cランを1日も早く整備できるような何か特別措置ができないものかという感じを持っております。

ちなみに、旅客のシェアを97年の国際線で見ますと、日本の56%を成田で担当しているんです。しかし成田空港は1本の滑走路しかないわけですから片肺飛行をしているようなものです。ということは、国際空港としては欠陥空港といわざるをえません。ですから、成田の滑走路整備と相並行して、もう1つの新空港を早期に建設する必要があります。例えば、羽田の東側に、4000m滑走路2〜4本、3000m滑走路3本程度の機能をもった空港を建設して羽田と一緒の情報コントロール・システムで統合運用すべきではないかと考えます。

そこで、日本列島の主力空港は具体的にどんなものなのかを知るためにつくったのが、〔表11〕です。これで見ますと、離着陸回数は羽田で22万回です。新東京は13万回、新関西が12万回です。他方意外と大きいのは新千歳空港と福岡空港です。羽田の滑走路は3,000m2本、2,500mの横風用が1本、合計3本です。新東京はたった1本、Aランだけしか動いておりません。B、Cランはこれからです。大阪はBランのみ、伊丹が3,000mのAランと1,800mの2本ありますが、ドメスティック・エアラインだけになっている。新関西の場合には、Aランの3,500mが1本あるだけ。これから4,000mをつくっていくことになります。「経済は先進国・空港は後進国」これが日本の首都空港の実体です。これでよいのでしょうか。

首都空港をつくることは、むだではなく、21世紀に日本が発展するために必要不可欠の社会資本です。新千歳、福岡、鹿児島といった地方空港は利用客スケールが大きく、雇用増効果は極めて大きいが、中小地方空港のなかには、利用率が低く、今後総合交通体系論的視点で、再編成が必要になるでしょう。

雇用効果に目を転じますと、羽田で3万1,000人です。新東京が3万9,600人、伊丹が8,500人、新関西が1万8,000人、名古屋が4,000人、千歳が4,900人、福岡空港が5,600人、鹿児島空港が1,500人以上です。

そうすると、空港建設の雇用効果は極めて大きいということです。まして東京、大阪ならば、かなり効果があると見てもいい。ドメスティック・エアラインだけを考えれば、新千歳と板付、この辺のところを集中的にやる必要があるのではないか。

 

 

 

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