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資産インフレ時代においては、東京都市圏で75m2のマンションが8,000万円、それが現在のところは4,300万円と半値になった。しかし、距離帯域別に見ますと、やはり10km圏、20km圏、30km圏という形で値段の差はあり、値下がり率は遠くへ行けば行くほど低くなっているということが、1つの特徴点と思います。

しかし、いくら値下がりしても果たしてどのくらいの所得なら入手可能かどうか、その目安となる年間所得の案配を〔表8-2〕で示しました。すなわち、譲渡価格を分子とし。分母を年収で割ったものです。5.5年以下だったら、わりあいに無理しなくても買えるが、それ以上ですと、住宅ローン返済に大変苦労するか、おやじが死んで遺産相続とか、あるいは嫁さんのおやじからの援助があるケース以外はまず入手困難ということです。

東京都市圏の中では、1985年現在では、概ね20km圏外なら75m2のマンションを約5.5年分の所得を充当すれば買えた。ところが、資産インフレ時代のピーク、90年になりますと、都心から60km以遠の地域でないと買えなかった。東北新幹線の小山の手前あたりから外側でなければ買えなかった。その他資産インフレ時代から資産デフレ時代に移行し、土地が値下がりしたために、現在は大体10km圏内は無理としても、10km圏外なら入手することができるようになってきています。

しかし、これは平均値です。東京駅を中心として、これを方向別に分けてみましょう。99年現在では、湘南地域(横浜方向)と、三多摩(中央線沿線)地域では20km圏外でなければ買えないけれども、埼玉、千葉なら、10km圏外ならば買えるということになっている。それをわかりやすく書いたのが〔表8-3〕です。

では、大阪、名古屋との比較ではどうかというのが〔表8-4〕です。これを見ていただきますと、90年のときは、50km圏では、大阪も手に入らなかった。しかし、名古屋は資産インフレ時代でも、10km圏外なら買えた。こういうのが1つの特徴点です。しかし、現在のところは、東京では20km圏内は買えないけれども、20km圏外なら買える。大阪、名古屋は10km圏内でも買えるというように変化しています。

三大都市圏全部が住宅不足ではなく、不足しているのは東京のみではないかと思われます。東京はより大きい住宅需要があり、そのスケールも大きい。その背景の経済力を、〔表8-5〕によって見てみたい。

 

5大国の経済スケール比較

 

5大国の経済スケール・貿易収支累積額をごらんいただきますと、日本のGDP(国内総生産)は、2010年には、Case3に示すように5兆4,000億ドルぐらいになる。アメリカは10兆5,000億ドルになりますから、ちょうど日本とアメリカの比率が0.5:1.0という割合になるのではないかと予測されます。

そのスケールを比較したものが〔表8-5〕の中央部のスケール比較で、2000年現在で日本の4.8兆ドルを1.00としてみますとアメリカが9.7兆ドルで2.04倍、ドイツ2.3兆ドル・0.49倍、フランス、イギリスはそれぞれ1.5兆ドルでO.31倍となります。このような経済スケールが投影して、国際金融市場とか資本市場のスケールを拡大し、アメリカ13.2兆ドル、日本の8.7兆ドル、独・英・仏の3カ国合計で6.4兆ドルということになり、日本1.00:アメリカ1.52:欧州3カ国0.74という割合になっている。

国際金融市場は1988年現在で、アメリカのニューヨーク市場は13兆2,000億ドル、日本の東京市場が8兆7,000億ドル、ドイツ(フランクフルト)、イギリス(ロンドン)、フランス(パリ)を合計して6兆4,000億ドルですから、日本の金融市場はそう小さいものではないと考えてもいい。その背景になっているのが貿易収支です。

85年のG5以来10年間の累積額を見ますと、貿易収支の黒字額は1兆2,000億ドルで、8.2万トンの原子力空母114隻を中核とした1,030隻からなる大連合艦隊を建造しうるほどの膨大な金額に達している。

それとは逆にアメリカは、1兆2,000億ドルの赤字です。そして日本を除く先進国では黒字はドイツだけです。しかし、東西ドイツが統一したために黒字幅は縮小パターンです。フローが増えることは一定のタイム・ラグをもってストックが増えるのですから、対外純資産が日本は1兆2,000億ドルのプラス、アメリカが1兆5,000億ドルのマイナスというように、今や世界を見たときに、日本がフローのみならずストックでも非常に大きい。

 

 

 

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