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それでは、工業、小売、卸、貸出の集積性を見た場合にどうなっているか。まず東京を見ていただきますと、工業出荷額が12兆3,000億円、横浜5兆8,000億円、名古屋5兆8,000億円、大阪7兆1,000億円ですから、東京、名古屋、大阪、横浜の4都市が、5兆円以上の出荷額があります。その大きさを比較するために、東京を1/1とすれば、大阪は1/1.7、名古屋は1/2、横浜1/2です。東京の工業生産力はそれほど大きくないと思っていたら大間違い。工業機能もものすごい集積スケールを誇っている。工業機能をコントロールしている中枢管理機能と技術開発力がまた東京に集中しています。

事業本部的な新しい技術と商品の開発を企画立案し、その製品が採算的に合うかどうか。合うなら、どのくらいつくったらいいか。それをつくるための設備を設計し、生産し、レイアウトし、さらにメンテナンス・コストを安くしていくという頭脳的な工業機能が、この東京に集中している。東京の小売が13兆6,000億円の売上高で、10兆円以上の都市は東京しかない。卸売は173兆円で、3桁台は東京だけ。大阪は63兆5,000億円ですから、1/3です。商業の都大阪と言っているけれども、それは昔の話です。

いま、貸出機能に焦点をあてると、銀行の融資機能は会社社長の首をすげかえるぐらいの力をかつて持っていた。東京はそういう貸出残高が約200兆円。大阪は48兆円ですから、大体4分の1ということです。

これをもっても、東京がいかに中枢管理機能が大きいか。また、〔表6〕で都心の拠点性を見ていただきますと、千代田、中央、港という都心3区は、他都市の都心機能と桁違いの高さを持っている。札幌の都心は中央区、仙台は青葉区、名古屋は中区、大阪は中央区、広島は中区、福岡は中央区ですが、その都心機能拠点性をみてまいります。そうすると、卸売が、全国平均を1としますと、東京千代田区は727倍、同じく中央区が217倍、港区149倍ですから、その3桁台の倍率を持っているのは、東京以外では大阪の中央区295倍だけです。

そこで、東京千代田区727倍と大阪中央区とを比較すると、天と地の差があり、大阪はもはや卸売機能の拠点性でも東京に追い抜かれています。食い道楽の大阪というけれども、飲食機能の拠点性は中央区で46倍、東京の千代田区は64倍ですから両者を比較すると、これまた格段の差がある。それから、預金は東京千代田区が681倍、大阪は中央区が155倍ですので、東京と大阪の格差は大きい。

貸出残高の拠点性にいたっては、東京千代田区は1,464倍ですから、4桁単位の拠点性は日本列島で千代田区だけです。金融機能として、預金貸出等々を統一しますと1,000倍ですから、1,000倍に匹敵するような、そういう強力な拠点性を持っているのが東京のCBDである。その東京の中でも、都心3区であり、なかんずく千代田区である。

ところで、県民所得がどのくらい伸びているのか、成長性を見てみたい。

〔表7〕に示すように60年から97年までの37年間で全国平均で24.4倍も伸びております。しかし、これを東京都市圏内の各県を見ますと、東京19倍に対して、埼玉、千葉は東京の伸びばかりでなく全国平均を大きく上回っている。東京都市圏を見る場合には、東京都だけを見たのでは現実をつかめないということです。同時に、京阪神都市圏の成長力がいかに弱いか。また、中京都市圏も、絶対量が小さく、かつ岐阜だけが25.2倍の伸びで、全国平均をわずかに上回っている。

東京、大阪、名古屋の3大メトロポリタン・エリアの成長力は、やはり東京メトロポリタン・エリアが非常に強い。今、大阪の所得格差、人口1人当たりの所得レベルを見ると、106.6です。それに対して、神奈川県が108.2、埼玉は107.2ですから、神奈川、埼玉並みが大阪府である。それで東京が136ですから、経済力がものすごく強いということがこれでもわかります。また、メトロポリタン・エリア単位でも成長していることがわかるわけです。

 

東京圏の住宅取得の可能性

 

それならば、経済は伸びているが、住宅取得の可能性はどうかを検証するために作成したのが〔表8-1〕です。

 

 

 

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