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尾島 それだけをやっている段ボールの若い建築家がいます。それはいいとは思いません。

 

石井 いいと思う人と思わない人の多様性。感性工学だから多様だったらビジネスになるんです。毛沢東語録では一色しか売れません。多様なのが情報社会に絶対必要。おれは嫌いだとか、おれはこれがいいとか、こんなものがいっぱいあるというのはこれからのポイントであって、今までは好きだったけれども、あきてしまった。これはビジネスとしてはいいんです。あきてくれたほうが。

 

古川 捨てるから。

 

石井 次のニーズが出てくるから。

 

尾島 20世紀後半の日本の建築都市は近代産業の中でめちゃくちゃになりました。今の話を聞いていると21世紀はもっとめちゃくちゃになるような感じがします。

 

石井 古いパラダイムから見たらめちゃくちゃでしょう。だから、ある意味ではカオスです。そのカオスから自己組織化で次のものがどういうふうに出てくるかというのはわからない。複雑系だから当然わからない。

 

激烈な国際摩擦が起こる

 

古川 私も今年、はからずもiモードの親指入力時代を実感しました。この3月に大学を出たてのお嬢さんを2カ月預かった。話していて電動タイプの話になって驚きました。電動タイプって聞いたことはあるが、見たことはないという。なるほどそれならと、海外宛の厚い封筒に宛名を打つのを見せた。そしたら、何に感心したと思いますか。IBMのボール型インパクトのメカに感心したのかと聞いてみたら、キーボードはパソコンと同じですねって感心している。iモードになったらキーボードは要らない。その次はプレステです。プレステの操作はもっと困る。プレステを売ってもソニーは儲からないで、DVDだけ売れていると聞きますが、僕も持っています。だけれども、ゲームなんて子供でないとできない。スピードが段違いです。おまけにDVDをかけるのにも14個もあるボタンやジョイ・スティックを操作するには、いちいちマニュアルを見なくてはならない。あれは完全に別の世代だ。

 

石井 だから、その世代が変わったところがこれからの都市の中にいっぱい出てくる。それにどう対応するか。

 

尾島 プレステみたいなことがあると都市がめちゃくちゃになる。何とか防戦したいんだが、完全に情報量が違う。

 

石井 好きこのんでというより周りにそんなのが多い。特に慶応に移ってからです。参ってしまった。だって、みんな茶髪でピアスだもの。

シングルの人から見たら全然わからないと思う。今、富田君という人がいまして、これはトリプルなんです。マルチもいいところで、医学博士号を持っているし、人工知能を持っているし、それから翻訳です。だから、今、おっしゃった典型的なあれ。ちゃんと慶応の大学院を出て、Ph.D.のあれに自分で授業料を払って行ったんだ。だから、今のカリキュラムは前の世界ではよかったんだ。工業社会の分業体制でよかったんだが、今のカオスみたいなところではシングルは不十分じゃないか。

 

古川 それこそiモードで質問してきたときにイエス、ノーとすぐに決められない。

 

菊竹 建築でも、今までは例えば1つの玄関、エントランスが1つあって、あとメーンのエントランスに対してサブのエントランス。それがだんだんたくさんのエントランスがあって、どこから入って、どんなふうに使うかというのはその都度、その人の目的に応じて使えばいい。だから、エントランスの非常に多い建築ができてくるんだというようなことを言って、みんな、そんなことになったら大変だと言っているけれども、今のお話を聞くとそういう感じになってきますね。

 

石井 人間のほうが変わっちゃうからね。我々にとってはなじめないんだが、次の次ぐらいの世代かな、20代に接していると、僕の趣味と全く違うんだろうなと思います。

ウェアラブルの話をしませんでしたが、最近、ES細胞と言っているじゃないですか。例えば臓器の中で皮膚移植がかなりあるとします。考えてみると、皮膚は衣装というか衣服の原点です。

 

 

 

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