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尾島 いつも刺激を受けてひどい目に遭っているんです。

 

石井 ある年齢の人、ある条件の人がどんな反応をするか、子供を含めて大事なんです。そこが決めるのですから。僕は何でも食いついちゃうから。

 

尾島 でも、リアルの世界と違うんだと思いながらも、その世界が今の産業を引っ張ったりしているところに問題があるんです。

 

石井 そう。だから、バーチャルリアリティーは別だと考えられなくなった。バーチャルがリアルとフュージョン(融合)してくるから、エックス線CTです。CTなんてたかがコンピュータートモグラフィで、考えてみたら全くバーチャルリアリティーです。輪切りになんかできっこないんだから。ところが、あれを見ないと診断できない。

 

尾島 そういうものをみんな眺めているから、外の建築も自然の植物もだれも見ないんですね。見ているのはそっちのほうばっかりで、都市とか庭とか建築のデザインなんかはどうでもいい。ほとんどの時間はこっちを見てる。

 

石井 だから、それは部屋の中で見ていたらだめ。それでモバイルになった。現場で見るのが一番です。

 

尾島 現場で見ても、野球を見にいってもそっちを見ないでこっちを見て。

 

石井 両方見るというシステム、今はこれだけでわかるようにできているんです。兵器なんかは違います。兵器は現場の映像に加えて、あるスーパーインポジションで初めてミサイルが飛んでくる。どっちかだけでもだめなんです。現場がないと戦争にならない。現場だけでは、昔、鉄砲を撃っているのと同じだから、その両方ないと今はできなくなってしまっている。

 

古川 軍事用のITはまだまだリリースされていない。

 

石井 そうでしょう。軍民転換で、冷戦が終わったときに相当出たんです。リリースというより本人が別の職業になってしまうから、その人がつくる。例えばゲームなんかでおもしろいんですが、ほんとうに戦闘機に乗っていた人が遊ぶのです。だから、リアリティーがものすごくある。アメリカ海軍のエースなんかが湘南藤沢に売り込みに来た。ゲームです。今まで何千万円したやつが、通産省の人が来て、これはこの間、何億円で買ったんだ。それを何千万円で売りに来る。ところが、しばらくしたら任天堂かどこかが何十万円で売っている。それでがっくりした。そういう世界なんです。

 

日下 テキサスの戦車部隊が走り回っているのを、フロリダにいる人が画面で見ながらそれをつぶすんです。これはほんとうの演習なんです。何億円とかのソフトを買ってきて、それを向こうが安く売ってくれるそうです。日本の自衛隊へ持って行ったら、それは三菱からこんな値段で買っていると言うんです。そんなに安いんですかなんて。

 

石井 ゲームメーカーへ行くともっと安い。しかし、都市の問題に返ると、そういうところが入ってこざるを得ないでしょうね。だって、人間が変わってしまったんだから。宗教が変わることをコンバージョンという。僕なんか、ディフェンスコンバージョンといったとき、転向すると考えないで転換なんて訳していたから、ただ変わる、スイッチするだけだと思ったけれども、心が変わるということがある。心が変わったというのは、都市に住むと行動も当然変わるんです。

 

尾島 コルビジェが1930年代に、「家とか建築とか都市というのは住むための機械だ」と言った機械時代がありました。でも、今度は機械ではなくて、うまい言葉がない。そうすると考え方が変わってきますね。

 

石井 そう。あるいは町とは何かとか家とかね。それがない前提でできていた場合と、それが入ったときにどうなるんだろうか。

 

尾島 最初から考えてデザインしたほうがいいですね。

 

古川 この間、尾島先生から伺ったんですか、建材として一番いいのは段ボールだとかいうお話だったのですが、違いますか。

 

尾島 僕ではないと思いますが、そういうことを言っている建築家はいます。

 

古川 段ボールの上に羽毛ふとんの廃棄物を裁断したものを、特殊な塗料で貼りつけると、非常に断熱性と防音性が得られる。だから、柱材で骨格構造さえ作れば、あとはパッパッとDIYで組み立てられる。

 

 

 

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