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それを絞る悪戦苦闘をやったのが松永真理さんの本に書いてあります。インターネットに入るときにパソコンではないもので入れるという発見なんだ。子供のはパソコンだろうが何だっていいし、これで俳句をする人だっている。その人にとっては筆と同じ、短冊に書いているのと同じつもり。俳句が作りたいんだから、ほかの機能は要らないんです。

 

古川 たった5・7・5だから入る、おじいさんでもね。

 

石井 考えながらゆっくりやればいいんだ。でも、若い女性なんかは速い。親指一本でティーンエージャーだったら50字ぐらい入るんじゃない。信じられないほどです。

 

日下 1分間で100字打つという人がいる。

 

石井 平均50字はいくんです。これに一回慣れてしまったら親指が使えなくなる。これもまたおもしろい。要するにポケベルで入った連中なんです。なぜ僕がこれを持っているかといえば、電波がこっちのほうが強いんです。しかし、だめなことがある。特にビルの上のほうはだめです。そのときにこちらヘバックアップしている。そういうことがないと、これだけで万能ということはない。だって、これはたかがリモコンでしょう。パソコンはそれができます。できますで全部抱え込んでしまった。だから、万能機になってしまった。形態的に小さくしているけれども、機能的には大型コンピュータと同じようになってきてしまった。エンジニアリング側はそれができることがセールスポイントだと勘違いした。

ところが、松永真理さんがやったのは、そうじゃなくて何が欲しいんだというユーザー側からのニーズから入ったのです。今まではエンジニアがこれがいいんだというのを押しつけていた。しかし、これはそんなのは要らない、これはリモコンなんだから、欲しいやつだけがこうやればいいということです。これはすぐにデジタル家電に入ります。デジタル家電をつくれる家電メーカーを持っている国はそうない。アメリカは家電をやめてしまった。デニスなんてOEMでやっている。かつてのGE社は家電王国ですから、GEの電気冷蔵庫とかいっぱいあったが、やめてしまった。あるのはアジアとか日本です。日本もどんどんアジアに出しています。だから、これをデジタル家電のリモコンだと思ってしまえば一体なんさす。これで計算をするか、その程度であって、極端に言えば計算機が別にあってもいい。

今、僕の周りの若い人を見ているとメールの7割がこれになってしまった。パソコンを使うときは長いメールとかソフトをつくるとか特殊なときだけです。人間は歩き回っているんだから、特に中小企業は。都市というのはそういうもので動き回っている。座って朝から晩までというのは特殊な職業です。大部分は商談で飛び回ったり。そのときにこれでメールが常時来ている。しかもコンマ3円で来ている。使わない方がばかです。だから、僕はばっと使ってしまう。しかも、会社の今までのシステムはアメリカ型だったが、今は別になっている。だから、こういうものを2つぐらい持っているのはいっぱいいます。

僕の周りでは3つぐらい持っている人もいます。同じ通信会社のものではありません。ドコモとJフォンとPHSとか。僕なんかはバックアップに持っている。ユーザーとして見たら、このリモコンがだめだったら別のリモコンでやればいい。これを高級化してなどということは一切考えないカルチャーが出てきた。

 

みんながよければよし、のボタン

 

日下 最初、携帯電話が出てきたとき、これは農村地帯でこそ普及すると言われたんだ。ですが、都市の人も農村で畑へ出ているようなものだというわけです。机の上に座っていないというわけです。

 

石井 それはあんまり関係ない。座っている人もいるだろう、そういう分業をしている人もいるだろうが、それはごく一部です。あるいは個人生活でも、例えば、メールをためたら大変です。メールがたまっていたら処理するだけで大変。これはためてはいけないわけです。来たときに全部処理してしまっている。

 

日下 僕は人間の上と下が変わると思っている。すぐにイエスを言える人が上に立つんだ。言えない上役は首なんだ。下の方はイエス、ノーになるような文章で送らなきゃいけないわけ。この辺についてどうですか。

 

石井 だから、秘書の訓練なんです。ほかのことをしながら、人と会いながらバイブレーションで入ってくるでしょう。

 

 

 

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