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上杉鷹山が米沢藩の窮状を救ったのを見たら、全国に養蚕と機織りが輸出されます。米沢藩の熟練した女工さんが松山藩に派遣されるとか、いろいろなところに何人連れだかで行っています。そこでまた桑畑を作り、農家に蚕を飼って機織りをするんです。

 

日下 普及過程はみんなそうです。

 

古川 そこから京都の織物に変化していく。

 

菊竹 これは余談ですが、フランスには、建設省はもうありません。廃止しました。

建設省の次官の方がおっしゃったのだから本当だと思います。スウェーデンもそうです。都市をつくったり、住宅をつくったりする仕事がなくなったら廃止します。今から3年から4年前ですが、私は住宅建築の審議会で、初めて委員になったときに建設白書を見ました。建設白書の中に、住宅は1所帯1住宅を達成したと書いてあります。そうすると住宅局はおやめになるんですかといって聞きましたら、住宅局がその審議会を主宰していました。それから役人の数です。アメリカの建設省の役人の数と日本の建設省の役人の数を比べると、人口当たりに対して日本は少ないというのです。ところがこれは見せかけで、現在の建設省の役人の数で比較すると少ないんですが、公団が数多くあり、すそ野が広い。そこに、2回、3回とリタイアした人がいますから連合体です。民間という名の建設省のブレーンです。これで比較すると2倍です。

 

日下 外郭団体は全部要りません。建設省を廃止すればいいでしょう。運輸省だってみんな民間に任せれば廃止してもいいんです。アメリカと航空交渉だけをやればいいんです。

 

尾島 外交・軍事だけは政治家。

 

古川 外交も民営化して、どれだけアメリカ人の友達を持っているかという数でやった方がいいです。

 

菊竹 アメリカという国は底力があって、本当に恐ろしいと思う。アメリカのある町が、市長が議会を全部退職させてしまいました。議会を廃止し、自分の町はどんな政策がいいかと、民間の調査会社に委託しました。そして2つ、3つのシナリオを出させ、その中で町長がこれといって決めます。その調査会社に払う費用が、議員さんに払っている費用よりもはるかに安い。町にとってはその方が得だというんです。僕は自治省の懇談会のメンバーなんですが、自治省に議会廃止はできませんかと聞きました。大きな人口の都市はもちろん議会がしてもいいが、議員の数が20人とか30人しかいない小さい町まで、きちんとした政策をやれるはずがありません。それよりも調査会社に委託すればいい。例えば、電通が調査すれば、政策自体もそうだし、この問題を扱うときには、どの局のだれにアプローチしたらいいだとか、どんな顧問をやってどんな政策で1つの組織をつくってやれば実行できるとか、お金はどこから集めたらいいかまでやってくれます。

 

日下 日本はそれはだめです。結論をまず伺ってから書きますから。

 

古川 人材もないところもあります。長野県のオリンピック道路が作られてすべて舗装したものですから、今まで長野市か松本市で止まっていた若者が、東京に流出して全然いなくなった。小川村の保健所長が留学経験もある変わり者で、保健所長兼村営診療所長で、保健課長もついでにやっている。その人の言が痛烈です。村役場の人間で、体も頭も真っ当な人間は数えるほどしかいない。何か故障があるから村役場に勤めている。だから悲しいことに、仕事をしようにも配下がない。村議会は農業トラクターに乗っていたおじさんが、着替えて出てきて赤絨毯に座ったところで、実のある議論ができるわけはない、そんなものは廃止すべきだ。

 

日下 田中角栄元首相の名言に、日本国がこんなにおかしくなったのは村会議員、町会議員に給料を払ったからだというのがあります。昔はみんな名誉職だから、手弁当でやりたい人がやっていました。しかもだんだんふえて、300万円、400万円、500万円になると、その金の半分を使って選挙運動をして、また当選しようとします。だから買収がきくようになります。

 

菊竹 新しい都市をつくるということが非常に難しいんです。ハイパービルの人口は数10万人となります。そうなると、なまじっか既存の都市のいろいろな制約を受けるよりは、自分たちで警備をやったり、自分たちで医療をやったりします。

 

 

 

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