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水道の復活ということでは、僕も大変夢を持っているんですが、このごろ東京の雷が減っています。水路が無くなったからです。小さな目黒川でも水が流れていると、そこから立ち昇る蒸気が雷雲を引っぱってきます。水路は雷道でもあった。

 

歩いても歩いても同じ町

 

日下 昭和40年ごろ、田中角栄元首相が仕事が無くて退屈していたときに、都市政策大綱というのをつくりました。その中で、1カ所感心したのは、大深度地下トンネルです。そのときは地下50m以下は法律が及ばないことにせよ。こんな名案はない、だれが教えたのかと思っていたら、内閣情報調査室の人から、尾島先生に言われたと間接的に聞きまして、こんな名案をなぜやらないのだと思いました。運輸省の運政審の委員をしていたときに、物流トンネルをやれやれと言ったこともあります。自民党の集まりでも、田舎に1兆円、2兆円をかけるより、東京に金をかけろ、東京はその分すぐに税金で払ってくれますと言っています。東京に毎年3兆円ずつかけたら日本はいい国になります、と言ったこともあります。賛成者が多過ぎるからできませんでした。これは名案だとみんな思ったので、我が省がやりたい、我が省も1枚かみたいと、みんなむちゃくちゃ言いました。だから10省庁も集まってくるのです。それが、自分が自分がというから進まなくなってしまったと思っております。

昭和40年代から始まったことですが、各省の官吏がお互いに相談しなくなりました。建設省は建設省、運輸省は運輸省。高度成長で予算が潤沢になりましたので、同じことを3省が申請して、3省とも予算がもらえるような時代になりました。文部省が公民館をつくれば、労働省も福祉会館とか、厚生省も似たようなものをつくる。それで目一杯自分が頑張るようになりました。

各省の課長、局長がお互いに相談しなくなり、それぞれが目一杯を大蔵省主計局へ持っていって、調整は大蔵省でやってくれとぶつけるようになりました。それから大蔵省の地位がとめどもなく上がります。そこに目をつけて自民党が乗り出し、政調会長がとめどもなく偉くなります。大蔵省の主計局に持っていく前に、自民党政調会長を通せ。各省は事前調整をしないで、自民党の政調会長の前で目一杯けんかすることになりました。それで自民党の政調会長が主計局長を呼んで、大体こうまとめろとなったのです。これが自民党支配のここ20〜30年の構造です。

それがシーリングが行われてから、大蔵省主計局の地位が下がるわけです。シーリングしてしまいましたから、その中でどうするかなのです。今度は新しいことができなくなり、日本中が止まってしまいました。四国に3本の橋を架けて3兆何千億円。それで四国に何か起こりましたかというと何ごとも起こっていないでしょう。夏休みに観光客が行くだけで、2〜3回行ったらもう行かないでしょう。無料開放せよといっているんです。

もともとはペイするからといって、国会を通さずにつくった橋なんです。もし無料開放するなら、国道ですから国会を通さないといけません。ところが、有料道路で公団の仕事です。国民に迷惑はかけません、税金は使いませんといってつくっておいてから、赤字だから税金をくれ。銀行とかがとばっちりを受けています。これで大体100兆円損したでしょう。来年から法律が変わりますので、元気を出して、この尾島トンネルが実現するようになってほしいものです。

1,000万都市東京というのは、歩いても歩いても同じ町で、全然おもしろくも何ともありません。公共事業が全部同じ、商店街もまるで同じです。どこへ行ってもスーパーがあってコンビニがあって、みんな名前が一緒です。それから銀行の数が少なく、同じ看板の銀行だらけです。どこまで歩いても同じ町、また繰り返し、何もおもしろくありません。学校も特徴のある私立学校があまりなく、あっても文部省の補助金をもらっていますから、何も変わっていません。同じことを繰り返しているのでは競争がないわけですから、世界都市になれません。おもしろい東京になるためのインフラとして何が必要か。ライフラインは当然で最低のことです。

 

古川 日本人の本質的なところに均一性を非常に喜ぶのかすぐ真似ます。

 

 

 

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