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本家と違うのは、セント・マークスは田舎ですから5階建てで、力壁だけで躯体が作られています。それと同じフロアプランを高層にしてしまった。部屋の配置は三角形で、真ん中に三角のオフィス、つまり看護詰所があります。どこの病室にも一足で行けるコンセプトです。カウンターが低いものですから、看護詰所からすべての病室の扉ごしに内部が見えます。ところがデッド・コピーを作った建設会社が、耐震構造上必要な力柱を三角の真中にしてしまった。見通しの良い真中にどかんと柱が入ると、死角ができて詰所から見えない部屋ができた。巨大な力柱が突っ立っていると、人や物の流れを妨げます。

第2はセント・マークス病院は、田舎の5階建てでもきちんとISがあります。どこかへ新しい配管を設けるにも、ダイヤモンドドリルでスパッと穴を開けるだけで、別段大工事をする必要はありません。それをやっていないものですから、新鋭の聖路加病院で病室や検査室からの廃棄物は丈夫なビニールの袋に入れて、ずるずる引きずってエレベータに積んでいます。私は証拠写真を撮ってきています。トップの責任者が目を持たないとこういうことになります。部屋の配置だけのデッド・コピーで、精神は入っていない。

 

病院屋上にヘリポート

 

まず私が提案したいのは、東京ほど医療機関が揃っている都市ならば、病院の幾つかを指定して屋上にヘリポートをつくる。日常は救急搬送に使えます。これをまっ先にやったのはドイツです。アウトバーンの死者があまりに多いものだから、すべての総合病院にヘリポートを付けました。それからインターチェンジやジャンクションには必ずヘリが降りるスペースを設けました。友人がハノーバー医科大学病院の教授をしていますが、緊急部はヘリコプターを4台持って、常時待機して要請があれば直ちに飛び発ちます。

日本でもまず病院を拠点にして、緊急用のヘリコプターを配備するのが1つの提案です。しかし日本では、日夜を問わずヘリがバタバタ騒音を立てて飛ぶのに耐えられないという住民の反対で拒否されます。滑稽なのは大阪にある国立循環病センターです。移植に提供された心臓を全国から急送します。飛行機が伊丹空港に着くと、パトカー先導でセンターに行くのです。屋上にヘリポートをつくる予定が、近隣住民の反対で実現しなかったのです。私が勤めていました病院も、阪神大震災のときにヘリコプターで被災者を運べと言いましたら、施工した竹中工務店が「とんでもない、このビルにヘリを着けたら天井が抜けます」という。なぜかと糺したら予算がないから天井を薄くした。とにかく病院設計がでたらめで赴任した時に驚きました。手術室の設計は支離滅裂です。清潔であるべき手術室にハエが飛んできたと大騒ぎする始末。どこかおかしいと当時の院長からどんな指示を受けたか訊ねたら「院長先生から伺った意見はひとつだけです。同時に建築中であった大阪府立成人病センターより1mでも高く作れとの命令だけでした」というのです。院長がこんな程度ではだめです。

結局ヘリは着かずじまいで、幸い大阪城公園がありますから、そこに降りてから救急車で持ってくる。それでも1kmもあります。直かに降りられたらどれだけいいか。法律を改正して、救急病院の近くならヘリコプターの発着は当然至極と引導を渡し、住民を説得して計画的に配置を進めるべきです。そのかわり騒音補償はする、スペース・ガラスに取り換えるなど、住民対策を措置しなければ、どうにもならない状態です。

いろいろな問題が10省庁にわたります。何をやってもこのごろは省庁間にわたるとどうしようもありません。関東大震災後の震災復興院に相当する横断組織を置いてほしい。震災復興院はいろいろな圧力でつぶされました。つぶされないためには、情報をネット上に公開します。先ほど伺った火災の拡大のシミュレーションを東京の地図に描く、ドミノ理論で道路に沿ったビルが延焼して進行すると、わが家の座標を入れたら何時間後に焼けてしまうか分かる。それまでに避難所に行けるかどうか命がけである。そういう情報を公開して、災害に備える。かつ被災すれば震災復興院に与える権限について、都民の支持が得られると思います。

 

 

 

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