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屋根で受けた水をうまく処理すると、住宅でもかなりのビルでも、それで十分だという水量を獲得できるので、雨水はいいと言っていたのです。厳密に考えていくと、妙なことがあります。つまり酸性雨のような話がありまして、降り始めの水はかなり汚れています。そうすると雨が降ってきたときに、どこら辺までが汚れていて、どこら辺から大丈夫かという問題が出てきます。

センサーがあって、きちんとそれを決めて、降り始めの水は捨てて、一定の状態になったらためます。今度はためた水をどう使ったらいいかという、雨水の利用の仕組みが誰もわかっていません。雨水を上に揚げるには、風力で揚水するというのが一番能率がいいんです。風が吹いていなければ水は使わない、揚げない、しかし吹いてきたら高いところに揚げておきます。ビルでいえば屋上に揚げておいて、その差を使ってうまく利用するといったようなことです。

ところが最初にお話しました、おいしい水というか、人間にとっていい水とはいったい何なのかというと、よくわかりません。水をいろいろ調べておりましたら、ばい菌が適当に入った水の方がいいという説まであり、余り無菌状態にすると、かえって人間の耐菌性がなくなってしまうといいます。ほどよく汚れている水とは何なのかというと、全然わかりません。

 

1,000万都市と土

 

今、建築の世界で1,000万都市を問題にしたときには、土です。土というのは妙なものです。土をつくるのがとても面倒なんです。土をどうつくるかがうまくいかないと、植物を生かしていけません。緑と簡単に言っても、自然の土で、細菌やバクテリアをうまく保存できるような土、植物にとっての土というものが、我々はどこにでもいっぱいあると思っていたのに、そうそうありません。これはどんどん変化していきます。

例えば、チグリス・ユーフラテス川の地域は、ものすごい塩害を受けて、植物も全然生えません。塩害を受けている土を変えない限りは開発ができないわけです。それから中国でも、西から砂漠化してきている。世界がものすごい勢いで砂漠化してきています。それを止める方法として、土を変えないといけないというのが1つの問題です。ですから技術と空気と土が、この1,000万都市にはものすごく重要なテーマだということになってきています。

15年ぐらい前に、国連の仕事で、イランの開発に携わりました。イランは砂漠の問題もありますが、オイルがあるものですから、エネルギーがふんだんに使えます。使えるうちに新しい環境をつくりたい、どうしたらいいかというのです。建築で一番進んでいるのはフランスだから、フランスの技術を持ってくればいいといって、フランスの建築家たちが行きました。何をしたかというと、プレキャストコンクリートでビルをどんどんつくりました。これが向こうのライフスタイルに全く合わず、土曜、日曜になると、砂漠に行って星を見ないと精神的に安定しないという妙な問題が起きました。それからコンクリートでつくられた建物が、生理的に、生物的にどうもおかしいということで、ドイツで研究を始めました。土器を使っているところを地理的にずっとプロットすると、湿度との関係があることがわかってきました。日本も土壁を使っています。土壁を使っているというのは、あの土に非常に調湿効果があるわけです。日本で気候上、1年に2回ぐらい湿度がうんと高くなる時期があるので、乾燥するときには湿気を出して、湿度が高いときには吸ってくれるような材料を部屋の中に使っているところは、割合土壁の知識があります。それをずっとプロットすると、イランもやはり土です。

今まで日干レンガでやっていたのですが、日干レンガは非常に遅れたローテックの技術だといって、みんなばかにしていました。国連でもコンクリートがいいといっていたのですが、今は土レンガをどうつくるかを研究しています。板が2枚あり、それをボルトでつけて、土を入れ、固まってきたら外す。日干レンガをつくる技術を国連の援助でやるとは、一見ばかげているような感じですが、そういうことが起こってきています。公共建築で、内部に土を使うことをもう少しやった方がいいのではないかということで、土壁を内装に使ってみたらどうか、こっそりテストをしています。

 

 

 

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