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阪神大震災で学んだことですが、東京の災害のときに一番問題になるのは、結局、最後は自衛隊が頼みとなります。僕は何回も自衛隊と話し合ったり、本部を訪問してきたのですが、非常時の災害のときに、自衛隊は東京をどのくらい救えるかというシミュレーションは具体的にはありません。災害がどのくらい広がるかということで、関東大震災級と、直下型とを分けて考えました。直下型はあったとしても、関東大震災クラスのプレートが動くというのは100年間はないのではといいながら、もしあったとすれば、どうなるか。東京の町は、大体、放射道路と幹線道路で、東京都市計画というのは95%、区画整理の手法でした。道路を拡幅するときに、拡幅した分だけ周辺の容積を上げます。道路面積を増加した分だけ、容積を上積みするということですから、道路を広くするとそれに面した建物は高くなります。ドミノの駒です。間隔をあけると高い駒になり、間隔が狭いと小さい駒になります。ですから東京というのは、ドミノを倒すとどこからでも倒れていきます。要するに東京はドミノ都市です。ですから東京は都市計画ではなくて、道路計画しかありません。

例えば、池袋の端のドミノを倒しても、真ん中までばーっと倒れていく。見事なドミノ倒しになっています。しかも真ん中の旧環6の内側ぐらいはまだいい。江戸から続いたところ、新宿、皇居の東は、かなりの耐震建築で頑張っています。ところが、環6から外側の環8ぐらいになりますと、見事なドミノです。建築基準法や消防法を含めて、大体8分の間に消防自動車が来て、消し止めるという話になっています。ところが、8分間、消防車が来なかったら燃え続けるということです。きちんと建築基準法で一律になっていますから、見事にドミノになるわけです。したがって、もし関東大震災級ですと、8分で消防が来るはずがありません。シミュレーションしてみますと、見事に燃え続けます。そして1週間たつと昭島まで見事に燃えていく。そういうドミノ倒しを実際にコンピューターで試しました。

見事に燃えてしまうことで、自衛隊や消防の人達に、最初はコンピューターで見せ、さらに大きな画面で模型をつくり、自分の家が見える地図を見せながらやりました。コンピューターで確実に見せる一方、24時間後にはどこまで燃えるか、48時間後にどこまで燃えるかを、大きな地図上で見せました。自分の家が、何時間後に燃えるかをわかるように見せたのです。僕のうちは48時間後に燃えました。要するにみんなのうちが何時間までに燃えるかということがわかる。

そういったものを、消防の責任者、国の関係者、自衛隊からも来てもらい、議論してもらったのです。結果としてはドミノ連鎖を食い止める方法はない。自衛隊が助けに来る方法はない、消防も8分ですから、この燃えるシミュレーションは間違っていないということを認識されました。東京直下型ではなく、関東大震災級の地震が起これば、今度は山の手が、関東大震災のときの下町以上の災害となります。

その場合にどう救済するか。災害があったときに、少なくとも校庭かどこかに、一時避難をします。阪神の地震前は一時避難を東京は認めていなかったのですが、阪神後に一時避難広場が認められ、つくるようになりました。小中学校に集まり、そして大きな広域避難広場まで逃げます。広域避難広場までたどり着ける確率が15%程度なのです。これもシミュレーションしています。要するに85%はたどり着けない。たどりついても50%は空間が足りなくてはみ出されるという結果です。一時避難広場に入っても、誰が指導して、広域避難広場まで誘導するかというと、責任者はだれもいません。そういった不完全なことを、阪神のときに申し上げました。それから大幅に見直されたのですが、マニュアルがあっても実は動きません。責任者があって初めて動くマニュアルになっていますから、責任者がいなかったら動きません。一時避難広場は実際にだれもリーダーがいないわけですから、集まった切りになってしまいます。そうすると、もしそこの周りを火に囲まれたときに、だれが助けるかとなれば、結局、自衛隊頼みになります。

ところが、自衛隊側は、どうやってたどり着くのか。阪神でも3万人が救援に駆けつけても、地上からはなかなか現地にたどり着けませんでした。ですから緊急の場合には、やはりヘリコプター等になります。

 

 

 

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