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保身のためだけの名科白です。東京は関東の未来図を描く時に、試みに国民投票にかけてみては如何でしょうか。投票は大変良い手段だと思います。投票にはエクリプス効果と呼ばれる現象が知られています。他人の意見を知ることによって、全体の意見が微妙に変わる現象です。最近、これに気付いた政党が、出口聞き取り調査に反対しているのも、エクリプス効果を恐れるからです。頑固な人も「おれたちは時代遅れかな」と感じて行動を変える。住民投票では住民エゴの信任投票に止まりますが、国民投票を繰り返していけばいくら土建政治に洗脳された県民でも、オラが村から出た総理は恥ずかしいと全国で思われているとわかって来る。すると行動にも変化が期待できる。いくら楽観的でも今の民度で首相公選は危険過ぎますから、せめて成田空港や関西空港問題について国民投票を試みると、国民にとって良い経験になるでしょう。大衆主義では困りますが、民主主義への無血革命の可能性があります。

 

公共交通機関の効用

 

東京でまず先鞭をつけ、地方の大都市、特に大阪の模範となるべきことは、公共交通機関の効用を最大に発揮する方法です。これは実は東京のある区で試行段階にあって、早稲田大学が関係しています。私は当事者に言ったことがあります。大阪の交通がめちゃくちゃなのを解決するのは簡単で、現在でもバスにはロケーションシステムがあるから、バスの方から位置情報を発信する。交差点にバスが接近したら信号を青にする。バスの停留所は交差点の手前に置く。バス待ちしていた乗客が乗り降りして走り出せば、必ず青信号になる。もちろんバスの後ろに従っている車もスイスイ走る。これを1週間続けて学習させれば、車はバスの後ろに素直に従ってくるようになる。大きな交差点はどうするか。それこそパソコンの出番で、どちらの待ち行列が長いかを前後複数箇所の交差点からの情報を含めて判断し、近辺の車の流れを優先する指示を出せばいい。この案を阪大の都市交通専門と称する教授に話したら、一言のもとに「これだから素人は困る」と言われました。早稲田大学の教授に話したら「それを大学院生の論文にしていいですか」との応答がありました。最近どこかの区で、バスから指令を出して信号制御をする実験を始めたそうです。アメリカでもロサンジェルスのバスの運行制御に使っているそうです。なぜ日本では専門家が強固な砦に立て籠もり、部外の自然科学者の素直な発想や意見を無視するのか。たぶん旧弊を守る保守性が、学問の衰退を招くと思います。

大阪の高速道路は、万博に合わせて無理やり造ったものですから2車線しかないのです。これでは早晩行き詰まると、建設の最中から警告されていたのに、結局、資金がないと門前払いのまま。今や悲劇の渋滞抗速道路です。菊竹先生から伺った知識ですが、現在の鋼鉄の強度は非常に高くなっているそうですから、高速道路をすべて2階構造にしてしまったらどうなるでしょうか。道路の両側に少し隙間がありますから、そこに鉄骨を組み入れて2階部分を増設する。現代の巨大橋なみに、1階は下り専用、もう1階は上り専用にすれば、交通量は2倍に増えるわけです。まず東京でやって見せて、「どうだ、やってみれば出来るではないか」と国内を説得してこそ首都の面目もあろうと言うものです。まず、手本を見せて、煽って、やらせてみないと、地方都市はついて来ません。

ついでに申しますが、日本の都会に昔の軒先文化を復興したい。これは、軒先を公共に提供するという奉仕精神がなければできません。しかし道路の拡幅と同じで、メーンストリートの建物の1階部分は歩道分だけ後退すれば、軒先文化が町を賑やかにします。テラスカフェも出来る。ベルンの街路などにいくらでもヒントは転がっています。そういう妙手を東京がまずやらなくてはいけません。

 

皇宮警察に裃を

 

馬鹿と言わずに聞いて頂きたい。皇宮警察官に裃を着せる。京都御所もそうです。観光名所の神社仏閣に背広の神主や和尚がいますか?東京の中心にある皇居は交通の妨げになるなどと言って、知識人面をするなんて許せない。あの広大な皇居の門にチョン髷で裃に両刀をたばさんだ武士が警固したら見物です。バッキンガムに並ぶ人気になります。ついでに江戸東京博物館もそうする。

 

 

 

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