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内環状運河は荒川か江戸川から小さく弧状に多摩川を結ぶことにしましょう。運河同士は支線で結びます。都心部は内環状運河から中小河川につなぐ。こうすると都内にウォーターフロントが誕生します。かねてから戦災復興の愚作で失った都内の中小河川を復活し、過ちを次の100年をかけて償う。数寄屋橋も「君の名」ももう一度復活する。ウォーターフロントとかシーサイドとかが身近にできると、住んで貰いたい人が集まる良い町になります。こういうプランを「絵に描いた餅」と申します。高望みであれ嘲けられようとまず絵に描く。描いた餅は食えない。食えないけれどもいつかは食ってやろうと執念を持って、子々孫々に餅の絵を伝えていけば、いつかは奇特な人たちが餅を作るかも知れません。そうなると、もはや外国の物真似ではなくなります。今度は外国から物真似しようと、新都市を見に来るようになるでしょう。

 

魔法のトンネル

 

それからもう一つ、前にも申しましたが筑波の研究学園都市には人間は住めません。だが、そこから15分で霞ヶ関の中心まで行く方法があるのです。半径804.288kmの円弧のトンネルを掘ると、最深部で600m弱、振り子は半周期15分です。現実に炭坑ではもっと深いところを掘っていますから、技術的には不可能ではない。もし真空で抵抗がゼロになれば、全くエネルギーゼロで霞ヶ関につきます。霞ヶ関の官僚も筑波の研究所の人たちと話した15分後に、実験を見て確かめることができる。もちろんその日のうちに帰ってこられる。首都圏中央道ができたから1時間で行けると豪語しても、15分では行けません。「そんなバカなことを」と言う人がいますが、関西の阪急電鉄はそうしていたのです。駅の間隔が大体2km、上下差が35mある。円弧の半径は14.3kmで経済効果を上げていました。走り出すときには電気でモーターを回すけれど、加速してしまえば、次の駅の頂点まで惰性で行ける。これも次第に都市化が進んで地上が走れなくなって、高架線になってしまいましたが、創業時代の最初の設計者はそこまで考えていたのです。

先見力は時代を越えるということです。後藤新平の震災復興院の計画を謙虚に見直して、現代に応用できるものはないか、真剣に検討する必要があります。現代の東京は前代未聞の都市です。モノも知恵も資本も集積した場所を生かして、地上の空間か地下の空間に広がるとか、あるいは離れた場所に瞬時に移動する。あらゆる手段を講じて再改造しないと未来は開けない、と確信しています。もし実行するなら、まさしく物真似の何が悪いかと開き直るのです。これだけのモノや知恵や資本を集積して、現実に力を発揮すれば、世界でひとつしかない都市が出来ます。世界遺産の奈良・東大寺と同じ価値が生まれる。つい何週間か前に東大寺に行き、東大寺の昭和の大改修をやった狭川長老のお話を伺いました。なぜ世界遺産か。8世紀半ばの藤原時代のブロンズ大塑像はここにしかないからです。鎌倉の大仏はずっと後世です。狭川長老は管長として改修のための喜捨を求めて行脚されたそうです。その時、日本の代表企業のどんな大物社長でも、東大寺狭川宗玄と書いた名刺を出せばすぐ逢ったそうです。世界でひとつしかない文化遺産はそこまでの威力があります。私もそんな知識に疎かったのですが、東大寺の大仏は金属塑像では世界最大だそうです。中国人は「いや、我が国はこれより大きい仏像がある」と威張るらしいのですが、それは石像だそうです。狭川長老は「私はいいところの住職をしました」と言っておられましたが、なるほどと合点しました。

素人が思いつく程度の提案を、はなから詰まらないと既す前に、別の提案でも何でも良いので、まじめに取り上げて実現する都市になれば、必ず世界の注目を浴び、ついでに国家として尊敬されるに違いないと思います。

 

国際空港完成へ国民投票を!

 

国家的事業への民意反映の実験は、これも尊敬される国になるために是非とも急いで実現すべきです。住民の恨みや陰湿な活動家の影を引き摺った成田空港問題が好例です。過去は過去として将来の日本のためにどうするのが最良か。同様に巨大港湾施設をつくる場合にも利害対立は当然起こります。「都民が1人でも反対すれば橋は架けない」という名科白があります。

 

 

 

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