牧野 最後でありますのでわがままをお許しいただいて、もうお一人どなたかご発言くださる方はいらっしゃいますか。
池田 以前このフォーラムで質問してまだはっきり理解できていないのは、ヨーロッパについてです。ヨーロッパには伝統があって、しかも、ハイテクノロジーの分野で実力もある。G7のメンバーの多くの国がヨーロッパにある。こういう地域から、テレビアニメにせよ、ゲームの世界でも、ヒット作品やメジャーキャラクターが出てこないのはどういうわけなんだ、という質問をしたんです。何で日本とアメリカだけなんだと。この点を教えていただければ幸いです。
野崎 その時に私がお答えしたことは、マンガのキャラクターとかそういう娯楽物は、そもそも大衆文化が根底にないと生まれてこないものであるから、日本とアメリカだけなんじゃないかと言ったんですね。
牧野 今の野崎さんの御意見も含めて、リチャードさんは、なぜこれほどに日本のアニメーション、アメリカのアニメーションが量的にも質的にも高いというのか、シェアを占めているのかというようなことに対する御意見はございますか。
リチャード パラドックスのようなものだと思います。というのは、ヨーロッパに行けば、パリに行って、イタリアに行って、ローマに行ってみる、どこを歩いていても芸術にあふれています。美術館があって、歴史的な建造物があって。ですから、ちょっとパラドックス的な状況ですね。何世紀もの時間をかけて発展してきた芸術的な力が、マンガやアニメの分野で発揮されていないというのは、パラドックス的だと思います。
ヨーロッパでもいろいろな国にアニメーションをつくっている企業がたくさんあります。しかし、やはり私から見ても、それらの会社が作った作品に触れる機会はほとんどありません。何故だろうと考えても余りいい答えが見つかりません。