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久保さんは現場でご覧になって、世界のスタンダードにしていこうという方向なのか、日本的であるがゆえにスタンダードになり得るのか、どのようなご見解でしょうか。

 

久保 いろいろなところで講演などをすると今いただいたような質問を聞かれますが、私はいつも同じ回答をしています。

どこで物を作っても、どこで物を販売しようと、作っているクリエーター、それから、プロデュースしていく人間が日本人であって、日本人として製作したきたものが僕はジャパニメーションであろうと思っています。つまり、日本文化を背景にして作られた物。

日本の文化は非常に多様性がありますので、ポケモンのような作品もあれば、ものすごくアダルトオリエンテッドしたものもあると思います。でも、それらを全部含めて、日本人が文化としてアニメーションに表現したものがジャパニメーションであろうと僕は思っています。

私たちはポケモンを海外に紹介する過程でいろいろなことを勉強しています。例えば、ポケモンカードの中で数百年の歴史を持つお寺の地図マークを使うといきなりナチを想像させるといってクレームを言われて、それを消さざるを得なくなる。日本文化独特のものを海外に出していこうとするときに、予想もつかない摩擦が生じる時があるんです。日本人でこの業界でこういう経験をした人はいなければ、対応するノウハウもない。お寺のマークが問題ならば、京都はナチの巣窟です。

このように、日本の文化を海外に紹介していくときにアニメーションというのは非常に有効な手段であるのだけれど、その中で仕事している私は世界を知らないんだということなんだと思います。

ですから、私が目指しているものは日本の文化を輸出したい、日本をより知ってもらいたい、そのことできっと良いことが一杯あるだろう、というつもりで仕事をしています。私が日本人である以上、ポケモンは間違いなくジャパニメーションの1つであって、日本の文化の1つであると思っています。

 

 

 

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