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牧野 日下さんご本人に伺う前に、佐藤さん、こういう問題については、個人どころか、例えば私が属している社団法人日本漫画家協会が決議したとしても、何も変わらないだろうという絶望感を感じます。今までマンガというのは、言ってみればまさにサブカルチャーであって、好きな人が好きなように描き、好きな人が好きなように読んでいればいいんだという世界であったわけですが、これほどに大きな経済効果を持ち始めると、そうは言っていられないですね。そういうときに、どうしたら法をつかさどる人たちが動くのでしょうか。

 

佐藤 これも余り詳しくないんですが、方法は2つしかないと思います。

1つはアピールですね。何回かそういう主旨の会議を開いて、著作権の問題が大事であるというのを訴えていけば、我々記者が行って必ず報じます。人が集まると思えば必ず政治家も動きますので、それを繰り返し繰り返しやるしかないと思います。

もう1点は、消費者が甘えを捨てる。わかりにくいと思いますが、かつてテレビ朝日で著作権の番組をやりまして、その中で私があれっと思ったのが、「サザエさん」と「バカボン」をくっつけた「サザエボン」とかいうキャラクター商品を追っていました。著作権問題の番組なのに、その番組ではむしろ売ってる業者に同情的だったんですね。100円ぐらいで売ってる怪しげな業者が、これだけ親しまれてるんだから赤塚先生もわかってくれるはずだよ、などと甘えたこと言ってるわけです。完全に著作権の侵害にもかかわらずですよ。それについてテレビ局も、マンガを愛する消費者たちにできるだけ安い値段で新しいキャラクターを届ける試み、とか言ってるわけです。

これはとんでもない話であって、ちゃんと頭脳を使って作品を作っている人間に支払われるべき報酬が支払われないルートで流れている商品をそうやって持ち上げちゃいけないんです。そういうのを安いからと思って喜んで買っている人間も甘えているわけです。そういう意識をまず変えないといけないと思います。いいものはそれなりの値段を払って買わなきゃいけない、というマーケットのルールをみんなが認識しない限りは絶対にイタチごっこが続くでしょう。

要は、アピールを繰り返すということ、消費者が甘えを捨てる、この2点しかないと思います。

 

 

 

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