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何がこのような環境の違いを生むのかと考えると、牧野先生がおっしゃったように、著作権の問題だと思うんですね。ゲームの世界は、幸いなことか不幸なことかわかりませんが、ソニーなり任天堂なり、世界の代表的な企業が最初から係わっていましたから、外国とのビジネスでも著作権について対等に交渉をすすめてこれたので、決して日本が不利になるような商売はしなかったわけです。海外のマーケットで売れたものについても、それに見合った報酬を得てきたはずです。

ところがアニメ業界では、長い歴史がある一方で、中小企業、零細な個人事業者が多かったせいか、どうも著作権の問題について認識が甘かった。代表的な日本のマンガでも、著作権をアメリカの会社に買われてそのまま塩漬けにされて、アメリカで全然放映されていない作品があると聞きます。それから、著作権の値段も常識では考えられないほど安く買いたたかれて、非常に安い値段でアジアなどで売られています。

こういう例を見ると、もう遅いかもしれませんが、零細業者の多いアニメ業界が、正当な権利である「収入を確保する権利」をこれからいかに強く主張していくかですね。その1点にかかると思います。

私は去年1年間、日本アニメの影響を見ようと思いまして、アジア6カ国を回ってきました。どこに行っても日本のアニメ、キャラクター商品というのはものすごい人気で、どんな地域の子供たちもポケモンを持ってますし、サンリオの商品を持って歩いてました。ただ、どう考えてもこれはまともなルートで買ったと思えないわけですね。著作権を払った値段の商品とは思えないわけです。

アジアのマーケットに我々が行って最初に思うのは、日本のマンガ、キャラクター商品、コンテンツは非常に浸透しているという感激なわけですが、よく考えると、これで幾ら儲かってるのか、という疑問がうかぶわけです。儲からないで人気を得ても何の意味もありません。冒頭に申しあげましたが、日本がこれから生きていくには、何で食っていくのか、何で稼ぐのか、この問題しかないわけです。意味のない人気、意味のないマーケット。現実的にそれでは食べていけません。牧野先生がおっしゃったように、著作権の問題は非常に重要な問題だと思います。

 

 

 

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