ですから、日本でつくって日本人に受けて、そのままアメリカに持っていってアメリカ人に受ければハッピーなわけですが、現時点では相当な手直しをしています。こと映画に関して言いますと、かなりの量を直しています。
確かに対象を子供に考えると僕らがつくった予告編でいいと思うんですが、ワールドワイドスタンダードということを考えると、やはりアメリカでつくったトレーラーの方がインパクトがあって人を引きつけるのかなと思います。
牧野 なるほど。
リチャードさんが最後に学生さんのおつくりになったアニメーションを見せてくださいました。私もアニメーターとしての技術を多少持っておりますので、あの作品がいかに大変な技術であるかということがよくわかります。つまり、1人の学生さんが、セル画ではなくて、例えばピカソのペインティングというか、タブローのような画法を使いながらアニメーションをしている。つまり、アニメーションのあらゆるテクニックがあの短い作品の中に込められているわけですね。
そういうアニメーションの専門的なテクニックと、それから、世界の一般的なアニメファンが歓迎するアニメーションの間に多少の落差があるように感じますが、リチャードさんはどうお考えでしょうか。つまり、ピカチュウのようなアニメーションと、先生がさっきお見せくださったような学生さんのアニメーションとの間の落差ということですが―
リチャード 非常におもしろい点だと思います。アニメーションの勉強をしている学生も、これからのキャリア、どういう仕事をしようか、卒業後の就職先などを意識してします。したがって、ハリウッドから出てくるようなアニメをつくったり、日本のスタイルをコピーしたり、もしくは、現代風なスタイルをコピーしたり、自分の将来を念頭に置いて勉強しているのが現状です。しかし、実際にスタジオが探している人材は、真似が上手な人ではなくて、独自の見方を持っている学生です。