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ところが、―話が飛躍しますが、日本の絵画がヨーロッパの絵画に大きなショックを与えた事例として印象派に対する浮世絵があります。印象派の絵描きさんたちが日本の平面的な浮世絵を見て非常にショックを受けたということは皆さんご存じのとおりであります。立体的な奥行きのある絵に対し、非常に平面的で、その中にすべての世界観を盛り込んでしまおうという絵画法がある。この2つの世界はどちらが上とか下とか魅力的だとかというものじゃなくて、それぞれの魅力があるんです。

日本のマンガ、あるいは日本人のマンガヘの接し方をリチャードさんはどのようににご覧になってますか。電車の中で、ネクタイを締めて三つ揃いのスーツを着た男がぶ厚いマンガ雑誌を大変な速度で読んでいるという場面に遭遇されると思います。多くの外国の方々がその状況に驚かれるといいます。―ちょっと司会の言葉が長くなって申しわけありません。先日、フランスのマンガ家でエンキ・ビラルさんというデッサン力のすばらしいストーリーマンガ家がいらっしゃって、精華大学のストーリーマンガの学生と懇親会を持ち、そこでいろいろな話をされました。ビラルさんの絵を見ると、余りにもすばらしいものですから、そこに視線が吸いつけられて止まってしまうんですね。コマを追って流れて行かない。パッと入り込んでしまう。日本のマンガの場合、そういった吸いつけるものを単純化、特化して作者が選んで並べてあるがために、どんどんどんどん先のページに進んで行けるということがあるんですね。

先ほど久保さんが日本でつくった予告編とアメリカでつくった予告編とは違うというお話をなさいました。久保さん、アメリカのような恰好いい予告編が作れないのが残念だという表現をなさいましたが、一方で、日本人の感性にはあのような日本型のものが合致している、―という視点はいかがでしょうか。これは私の感覚ですが、久保さんはどのようにお考えになりましょうか。

 

久保 ポケモンの映像は、何とかワールドスタンダードでありたいと思っています。つまり、日本から外に出すときに余り手直ししなくもいいような形をずっと目指しています。

 

 

 

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