ところが、宮崎さんのアニメが「もののけ姫」のように大ヒットになって、子供から大人まで受け入れられると、2Dには2Dのよさがあることを再認識させてくれるわけです。それはもちろんマンガにつながってます。
では、2Dと3Dをミックスして、人海戦術では扱えないものをわざわざデジタルで起こして、それをうまくセル画の中に持ってこようとすると、映像としては非常にちくはぐとしたものになります。つまり、3Dの奥行きの中に人の看板がぽんぽん立ってるというような状況になってしまうのです。この間「タイタニック」をDVDで見たんですが、DVDで「タイタニック」を見ると氷山が絵でかいてあることがよくわかります。それと同じように、やはり3Dの中に平面のものが入ってくるとすごく不安定だし、見る人がちょっと居心地よくない。
そこで、どっちに合わせようかということになるわけですが、「トイストーリー」は全部3Dでいく。だけど、人の表現を書くのは難しいので、おもちゃにしてしまおう。おもちゃならばある程度表現できないところも何とかなる。先ほどお見せした「ゾイド」は、全部2Dにしてしまおう。そのことによってセル画の持っている温かさは守られる。ですから、現時点はこの2つの方法があって、その間をいろいろな人が悩みながら行き来しているということになると思います。
牧野 非常に興味深いお話です。私は京都精華大学でマンガを教えているわけですが、マンガ・アニメーションを教える基礎として、ヨーロッパ風の絵画の勉強をします。「漫画家もデッサン力がなければいけない」と、100人の絵描きがいたら100人ともそう言います。立体的な感覚を持つということですね。これは3Dの画像をつくるときには欠かせない感覚でありまして、これがなければ3Dの表現はできないのです。