香山 僕にとってはもうポケモンでやることはないんですね。やれる立場にないということではなくて、だいたいやらなければいけなかったことというのはやってしまった。野崎さんからこのお話が最初にあったときも、僕はポケモンのことを語る意思がいままで一度もなかったんです。それは、どちらかといえば僕は裏方でたまたま運よく成功した。成功の規模は大きかったですが。でもそれを語ったほうがいい人は他にいると思っています。
今日敢えて最初ポケモンのところからお話しをしたというのは、逆にいえば、ポケモンを一つのケーススタディにしてはいけません、と言いたかったからです。ポケモン以前とポケモン以後だけがあります。そのなかにポケモン以前と以後の分水嶺、線を引いたのがポケモンです。ポケモンのやり方のなかで有効なやり方もあります。ポケモン以降だから話を聞いてくれる人たちも出てきています。ただ、このあとポケモンに続いているものがまだ出てきていません。バンダイも一生懸命やっています。小学館も含めてみんな一生懸命やっています。ただ、アメリカも真剣になってしまったんです。ポケットモンスターにディズニーは席巻されてしまいましたから。
私がブブチャチャというアニメ作品に出資をして、NHKのBSでやっていますが、あれはディズニーチャンネルが初めてアジアに入った作品です。KBSが検閲しないですぐ流してその週の番組占有率40数%で1位になりました。最初からタブーとか差別とかそういうふうなものを全部排除しながら、NHKに放映権だけ買っていただいています。ディズニーが買った最大の理由、興味をもった理由というのは、ディズニーが万全だと思っていた分野を、ある日突然ポケモンに足元をすくわれたからです。でも、冷静に今の状況を見たらもうポケモンの2作目の映画はアメリカで失速しています。マーケット的にも失速しています。いくらマネージメントをしていても、ディズニーのミッキーにはならなかった。キャラクターは休ませないといけないという原則をいま忘れているからなんです。
それでは、これから日本がキャラクターとかマンガとかアニメーションを成功させるかどうかという部分については、ポケモンに近づくかどうかは別にして、早く成功事例をつくらないといけないというのと、もう一つは休ませるということです。