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『源氏物語』を紫式部はどう書いたかわからないですが、最初からああいう構想があって、あのままつくっていたんだとしたらすごいと思います。

いま、実は、その日本のエンターテイメント界でもっとも求められているのは、あらゆるものの構成力でしょう。スクリプトもちゃんとつくれないんですよ。シナリオもできません。アメリカは、それをできないんだったらみんなでやってしまえというので、それぞれのパーツごとのプロを用意したわけです。

アメリカの場合、もともと多民族だったりとかいろんな価値観が併存する環境で、どうやってチームとして強くするかが命題なわけです。答えは、アメリカカンフットボールに代表されるようにシステム化するしかないんです。日本の場合、先ほど野崎さんが言ったコストのところも、あれは結局人件費なんですよね。安い人件費で少ない人数でやればそれは安くなる。だから、日本のアニメはセル画の使い回しが多いじゃないですか。この仕事が本当に大好きだ、この仕事ができたらカップラーメンを1日1個しか食えなくてもいいという人達が今まで支えていたんですよ。でも、そんな連中がどんどん少なくなっているんです。結局、海外へ海外へと仕事が流出するんだけれども、その精神までは海外にはもっていけない。実務といいますか現場をやっている感覚からすると、非常に危機感をもっています。いまの日本のままで勝てるというふうには思えませんね。

他社ですけれども、コナミに小島秀夫さんという方がいますが、彼のゲームはどんどん短くなっています。たぶん、次回作プレイステーション2で出るのは8時間で終る。開発費は20億ぐらいかかっていると思います。その前の作品は十数億かかっていて、14、5時間だったと思います。昔、PCエンジンとかでやっていたときは、開発費は本当に少なかったけれども、遊べる時間は40時間ぐらいあったと思います。そういう意味では、短くしながら厚みをもたしていく構成力を構築できる人というのは、日本にはほとんどいないんですよ。だから、彼の作品は世界中で受け入れられるんです。最初から世界を相手にしています。それから、宮本繁が足し上げていく最高の天才ですけれども、彼も最初から世界を相手にしている。

 

 

 

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