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もう一つは、議論下手といいますか、あまり文字リテラシーが強くないせいもあるんでしょうが海賊版を許したんです。許したというか追いかけなかった。そのせいで世界中にわっと広がった。これもどこまでも追求していって最後の1ドルまで取っていくというアメリカ式のやり方もあるんですが、そこまではやらなかった。国民性としてやらなかったということもあるのではないかと思います。

それから、絵ですから当然ですが、ノーランゲージでいけるというのが大きかったと思います。

最後に一番言いたいのは、メッセージ性とか創造力、スピリッツを入れ込み、そして人々を感動させていくというより原作力が他の国とは比べられないほどすごいのではないかと思います。ですから、何でも純化してきたからそういう能力があるのではなくて、我々の国民性としてそういう可能性をもった人が大勢いる国。それは2千年ぐらいかけてつくってきたものなので、100年や200年ではひっくり返らないわけです。その辺がこの国の大きなリソースなのだと感じているわけです。

 

香山 僕は日本人のエンターテイメントとかゲームもマンガもそうなんですが、足しあげていく能力は高いと思います。

例えばスーパーマリオでもそうだし、ソニックでもそうなんですが、ここでこんなイベントを起して、こんなことやったらおもしろいやというのをつけ加えていく。マンガのつくり方も最初から40何巻つくりましょうという話ではなくて、話のなかでこの展開だったらこうしたらおもしろくならないみたいな形で、温泉長屋を長くしていくように積み足していくんです。

逆に、全体設計、グランドデザインをして、プロポーションをもう一回整え直す、引いていくという作業については、日本人はとても苦手だと思います。ですから、本当に強いエンターテイメントが本質的なところはできてないんだと思います。それが世界に通用しない一つの理由だと思います。

 

 

 

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