すなわち日本とアメリカでしかできないというのが僕の意見なんです。二大生産地であり、かつ二大消費地が日本とアメリカだと思います。
その二つの国には違いが当然あるわけで、マンガだとかテレビコマーシャルだとかゲームなど比較的短時間に凝縮した精神を、言葉を使わずに表現していくという創造力・能力については日本が世界ダントツだと考えています。
それに対してアメリカは、ハリウッド映画に代表されるようにたっぷり時間をかけて、たっぷりお金をかけて、派手なアクションや特撮などを使って、台詞や文字などのリテラシーをふんだんに使って作る作品に強い。
どうしてそういう違いが出てくるのかというのも、先ほど香山さんがおっしゃった人と情熱に賭けるというところにちょっと近いような気がしていて、たぶん、田尻さんという人はアメリカ人のなかからは出てこなかったのではないでしょうか。文字リテラシーに頼らない、あるいは暗黙知のようなものへのリテラシーで相手に精神を伝えていくとか、何となく東洋的なものが入っていて、そういうものが日本は得意なのではないかと思います。
更に言うと、アメリカは契約社会ですぐ裁判を起こして訴訟で決着をつける。アメリカだけではないんですが、とかく欧米の国というのは文字リテラシーが非常にリスペクトされていて、すべて契約書にして裁判で白黒はっきりする。そういうのが気持ちがいい。これに対しまして、日本やアジアのなかには言葉では語らない暗黙知、目と目で話をつけるとか、あるいははっきり白黒つけるとお互いが不幸になるのでここらへんで水に流そうとか、あまり勝ち負けをきっちりさせないのが気持ちいいというふうに考える傾向さえもあると思うのです。そんな背景から日米が違ったものを生み出してきているなという気がしているわけです。
先ほど香山さんおっしゃったように、人と情熱に賭けたというのも、そういうことなのかなと思うんですが、いかがでしょう。