先ほど言ったように、ポケットモンスターは任天堂にしても流通側にしてもゲームとしては終ったものだと思っていましたからこの話にまったく熱心ではなかったんですね。宮本さんがてこ入れしてくれたので発売だけはできたという状況でした。メディアファクトリー自身ができる分というのは印刷的なところだから、カードゲームについてはうちでやろう。きちんと作る方は石原さんにお願いして、売り方、売る場所、そのタイミングについてはこちらで任せてくださいと言ったことを覚えています。先ほどの野崎さんの質問に戻ると、「これはいける」と思ったわけですが、石原恒和という人間と田尻智という人間、両方とも失敗したら倒産だったんです。その二人に賭けたいえます。
ですから、メディアファクトリーが3億しかなかったときに、周到に準備を重ねて、発売はその年の10月だったんですが、そのプロモーション費用に2億。それは小学館の久保さんがやりたいことを全部やっていただいて結構と、こんなことをやりたいというのでいくつか要望していたことも全部入っていたんですが、2億円近い明細がきて、「これは失敗したらメディアファクトーはすぐ倒産やな」なんて思いながら、そのまま突っ走っていったという感じです。
そういう意味では、「こいつらが作ったもんだから」という賭けですよね。「バトルロワイヤル」も、深作さんには「やめて他のものをやりましょう」というので何人か作家を紹介したりしたんですが、「やっぱり、俺は殺したい」という一言で決まるわけですね。そこまで言うんだったらというので、東映の岡田祐介さんと一緒に「バトルロワイヤル」をやった。その作品に賭けている熱意と、賭けている人が重要で、企画はある程度わかってもそこから先はもうわからないですね。
野崎 結局、人間と情熱というものに賭けているわけですよね。先ほど中国だって5%の人間がやれば頭数だけは日本の何倍にもなって、たくさん作品が生まれるかもしれないという話がありました。が、質のことを考えると、しかもそのなかにメッセージ性ですとかアイデンティティとオリジナリティを込めてやるというのは、やはり、大国でないとできないのではないでしょうか。