日本財団 図書館


逆に、その権利について問題が出ますよということをエージェントのような立場で、侵害しそうになっているところに対して警告を発したりとか、そういうことはあります。

この問題で私がいつも思っているのは、実は「アンパンマン」というのは見方を変えてみれば「不思議の国のアリス」ではないかということです。アリスでは、鏡の国の向こうの世界にいくとトランプが生きていたりしているわけですね。あんパンマンでも何とかパンマンとかたくさん出てきているんだけれども、そこに人間のジャムおじさんだけ入れる。これは「不思議の国のアリス」をある種翻案したのではないかと思うわけです。マンガをやっていると、いろんなマンガでやったものがうまく集められて入っていることはあるわけです。でも、その著者がそのマンガを読んでいるかどうかわからないです。もちろん絵は似てしまったらまずいと思うんですが、例えば田尻君のポケモンは昆虫図鑑だったり怪獣図鑑ともいえるわけです。彼が生きてきた人生のなかに投影されている大事なエピソードみたいなものがそれぞれのなかに入っているんだけれども、それはテレビの影響を受けたりとか、本に影響を受けたりもしているわけです。そうすると、境界線が非常に暖昧です。

そういう意味では、世界で普遍的に通用するものというのは、おおむね何かの翻案だと言い切れてしまうのではないでしょうか。逆にその自由度を失わないようにしないといけない。権利の主張だけできる環境ができてもどうしようもないという感じがします。そういう土俵にいってしまうと、国際紛争になったときに、日本人のロジックの展開だとアメリカとか欧米の人たちとのやりとりの中で勝ち目がないのではないでしょうか、

 

牧野 手塚さんのところでは、「ライオンキング」と「ジャングル大帝」の問題がありました。この時でも手塚プロは争わなかったですね。争ったら今おっしゃったように、―これは社長に聞いてみたわけではありませんが、―負けてしまう可能性もあったわけです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION