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ですから、マリオの兄弟はルイージといいますが、これは「類似品」だからで「ルイージ」です。宮本さんの場合、それぐらいキャラクターを生み出すという考え方がないんですよ。ゲームをつくっていくうえでの記号として工業製品と同じようにインダストリーデザインをしていったわけです。

任天堂も、やはり、「ポケモン」以降、アメリカで当たってから価値観が変わっように思えます。そもそも任天堂はキャラクタービジネスを否定していた会社です。任天堂では、他のゲーム会社などと違って、業務部というライセンスを許諾したりしているところがオマケのように周辺権利についての許諾も担当していました。ポケモンは、任天堂がディズニー化に向かう一つのきっかけともいえます。その意味では、「ポケットモンスター」は最初からキャラクターデザイナーが奇麗なデザインをしています。つまり、インダスリアルデザイナーがやっているのではなくて、ちゃんと絵をかいて、それをもう一回ドットに落としているというような考え方なので、そこはちょっと違うと思いますね。

 

牧野 いままでのマンガ・キャラクターという概念からいいますと、例えば手塚治虫に代表されるように、一人でアトムならアトムとか、その他の一連のキャラクターをつくっていった。その制作者の顔がキャラクターの後ろに見えるわけです。サザエさんは長谷川町子であるというようにですね。ところが、キティちゃんになると、誰がつくったかというのは、おそらくここにいらっしゃる方もわからないんだろうと思います。僕はサンリオの広報部に電話して、「どなたがお書きになっているんでしょうか」と聞きました。「いや、ちゃんといますよ。公表もしていますよ」との返事。いま作者が三代目になっているそうです。女性のデザイナー。キティのお姉さん―というイメージで紹介されています。

つまり、キャラクターの成立過程そのものが変わってきているということですが、キティちゃんなどの例を見ても、これ以上単純化できないほど簡単な形の猫なんですよね。そういったものが、あれほどのビッグビジネスになっていく秘訣というのは、実はわかっているようでわかっていないのです。

 

 

 

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