まず里中先生は根本精神しか口にしません。ITがどうだとか、私の国では漫画家の地位が低くて自由にものが書けなくて悲しいとか、泣き言も言わない。とにかく好きな漫画のために命を捧げてやりなさい。そういう精神をおっしゃるわけです。会場はそれをシーンと聞いていました。
他のスピーカーの方々は、ITだとか泣き言を言うのですが、里中さんは言わない。日本でレベルの高いマンガ家が育つのは、そういう根本にあるのではないかという気がしました。そういうスピリッツを持っているから、また、外国の方もそれを感じるから、日本のマンガ家はものすごく尊敬されているのではないでしょうか。
牧野 私の妹も実は少女漫画家ですが、若くして日夜、大変ハードな労働をするのです。その成果として大きな報酬も受け取るわけですが、やはり、日本の女性たちがこれほど自由に発言し、描いている現実は確かにある。―ということは、これもやはり研究対象として考えなければならない。どうしてなんだろうか―。特異現象なんです。日本だけというふうにいっていいくらいです。なぜでしょうか。いや、私はこういう意見を持っているという方がいらっしゃったらぜひご披露いただきたい。あ、日下さん―
日下 アジアでは女性の地位が低いとおっしゃったのは、僕は違うと思うんです。大陸では低い。島国では女性の地位が高い。あるいは北の方では男尊女卑、南の方では女尊男卑、山奥は男尊女卑、海辺は女尊男卑という分け方が1番正しいと思います。ですから、今ので言うと、高知県は絶対女尊男卑だろうと、僕はそう思っております。ですからアジアと言いましても中国大陸は別。それ以外では僕は女尊男卑だと思いますよ。