橋本 わかりました。余り高邁な話をすると、せっかく来てくれている若い人たちにピンとこないかなという気もします。しかし、今の話は高邁な話にいかざるを得ないので、ややそういう話をしますと、文化というものには行政や政治は絶対口を入れてはいけないというふうに思います。このことは行政や政治の側にいる者も考えなきゃいけないし、文化というものに少しでも関わりを持っている、絵をかく人、漫画をかく人、デザインをかく人、そういう方々も皆さん意識してほしいことだなと思うんです。
近代の歴史を見てもヒットラーのナチだとか、社会主義のロシアだとか、みんな国家として自分の思いを文化の中に反映させようとしましたが、結局出てきたものはろくでもないものばかりでしたよね。同じリアリズム的な絵にしても、例えばゴッホのかいた「馬鈴薯を食べる人々」と、それから社会主義国になってからのロシアの中での社会主義リアリズムと言われる絵を見たときにどっちがいいかというのは、別に絵が好きだとか、才能があるということに関係なく、みんなすぐ一目でわかることだと思います。
そういう違いというのを、僕は若い方々にもぜひ感じてもらいたいなと。感じてもらうことによって、政治や行政というものが口を出してはいけない。もしそういうことがあったら自分たちは少し大げさな言い方だけど抵抗していこうというぐらいの気持ちを僕は持ってほしいということを思います。
一方、我々の側で言えば、お金を出してというほど今お金があるわけではないので、なかなか大きなことは言えませんので、やはり一定、先ほど言いましたような土壌とか、評価の場をつくっていく、その支援はしていきますが、後の内容は口を差し挟むべきものではないし、特にこの「まんが甲子園」というふうなイベントであれば、本当は若い高校生、またはその先輩たちが、自分たちで自主的に動かしていけるようになればなおいいと思います。NPO的な流れになっていけばなおいいと思います。