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そういう漫画という世界をもうちょっと世間に評価されるものにしていきたいというのがこの「まんが甲子園」の思いでした。それを10年積み重ねる上でいろんな形で効果が出てきているのではないかと思います。

今年の「まんが甲子園」の決勝のテーマは「17歳」というテーマでした。17歳のいろんな事件が起きたということがきっかけに出されたテーマだと思いますが、優勝したのは熊本の松橋高校というところで、それは「17歳」というテーマで17歳の高校生が、17歳になった犬、つまり大変な老犬です。犬に対して「長生きしろよ。」と声をかけているという絵でした。この松橋高校の絵と、優勝したということが松橋町という地元の町の広報紙で全戸7千戸に配布され、また来年の1月には熊本県の広報紙、2万部発行される中にもこの絵が取り入れられるということです。また、この絵が「まんが甲子園」で優勝したということが全国に流れた。それをきっかけに横浜の保土ヶ谷区というところがありますが、ここの保健所がちょうど犬を相手にという絵でしたので、動物愛護の企画にこの絵を使わせてほしいということがあって、やはり社会的に認められる土壌というのが出てきたんじゃないかな。そういう意味ではとても「まんが甲子園」の10年というのは、大きな意味合いがあるのではないかと思います。

直感で感じたことと、今のように広がってきている影響というか、効果には随分違いがあるように思いますが、やはりおもしろい企画だなと思ったことは間違いなかったんじゃないかと思います。

 

牧野 さらに突っ込んだお話も伺いたいと思います。10年という年月は、マンガ文化の1ページを形作ってゆく。―確実に歴史をつくっていくのです。私は関東と京都で活動していますが、関東にいる漫画家たちも「まんが甲子園」の企画に対しては敬意を払っています。よくやったな、よく続いているなということです。ですから、先ほどお話に出ました高知県出身の一流作家たちの間にも、「バックボーンが1本通ったまんが甲子園」という形でしっかりイメージができ上がった。そして、この10年間、時間の流れの中でアンパンマンがヒットして、アンパンマン美術館ができたり、横山隆一記念館計画が立ちあがったり、さまざまな「マンガニュース」が生まれているのです。決して偶然ではないでしょう。「まんが甲子園効果」と評価しています。

 

 

 

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