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今まで、アニメーション制作の方、CGの専門家、マンガ全般に通じている方、外国の漫画に詳しい評論家などが登場しました。そうして、この企画全体の仕掛人であるのが日下さんです。今までマンガについて語るのは、漫画家とか評論家とか、雑誌社の方々だけだったのですが、財団の会長であり、多摩大の大学院教授でもあって、経済学を講じていらっしゃる日下さんが、全く新しいメンバーによって、「マンガ」を高い視点から論じようと考えられたのです。日下さん、冒頭に、フォーラムを立ち上げてこられた経緯と、これまでの7回の話し合いをお聞きになった感想―「まとめ」でもいいんですが、最初にお願いいたします。

 

日下 昔から思っていることなんですが、外国で立派に外国語をしゃべることができる日本人の話の中身を聞いているとただ賢いだけなんです。ただ賢いだけで後は何にもない。そういう人が日本のエリートと言われる人でありまして、しゃべっている英語が実にわかりやすい。どういう順番でどういうふうに考えてしゃべるのか、こっちが予想したとおりにしゃべります。日本人のしゃべる英語はよくわかる。だけども、会場を笑わすことのできる人はほとんどいない。

つまり、日本のエリートは会議を動かす力を全く持っていないんです。外国人は最初に何か冗談を言う。終わりにまた冗談を言う。みんながわっと笑って、何となくその人に惹かれる雰囲気ができる。日本人が一生懸命まじめに説明したことが全部とんじゃうんですね。日本にだってそういう才能はたくさんあったんです。特に高知県出身の人は、明治、大正、昭和とたくさん漫画を作ってみんなをあっと言わせてきたんです。そういう人がエリートと言われる人の中にさっぱりいないのは非常に残念なことです。どうやら、勉強し過ぎるとそういう才能が消えてしまうらしい。かねてからそう思っておりました。

その点、外国人なんかは際どい冗談をよく言います。例えば信号無視で警官に捕まって「お前はあの信号が見えないのか」と言われると、「信号が赤だってことはちゃんと見えていました。だけどあんたがそこにいるのが見えなかった」なんて答える。

 

 

 

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