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いまは、韓国において検閲というのは言葉として消えましたが、そのかわりに市場の原則とか、いろんなものが動いています。6、7年前までは、韓国のマンガ・アニメーションに武器とか血を描くことはできませんでした。特に暴力を描写する場面には厳しい検閲が入っていました。銃とか刀のようなものを描くことはできましたが、それを使う、例えば銃の弾が発射されるということは絶対描いてはいけませんでした。もし暴力物語が描かれた場合、背景に描かれるのはソウルではなく東京とか違う国のものを描くようなことをやっていました。これはすごく恥ずかしいことなんですが、韓国がずっともってきた一つのシステムの現れです。

でも、韓国は世界に例のない最も早いスピードで民主主義をいま現実化しておりますので、いまの若い作家とか読者はまったく違うことを考えたり、受け入れたりしています。考え方にしても受け方にしても、いまの日本の若者とほとんど変わらないと思います。もっと自由な想像力を発揮することもできます。いまの若い人たちがこれからたくさん本当の作品を作り出すようになると、豊かないろいろ世界が描かれると思いますし、河童も百種類以上たぶん現れてくるでしょう。

 

日下 呉さん、日本語も英語も中国語もおできになる先生にお聞きしたいんですが、日本のマンガは英語にしたらおもしろくなくなるんですか。中国語ならおもしろいんですか。

 

呉 まず、検閲のことを答えさせていただきます。私はなぜシンガポールマンガあるいはアニメ、若者文化など地元のものが駄目になった一番主な理由は政府の検閲です。国の大きさは関係ありません。なぜなら香港も小さいけれどもちゃんと特色あるすばらしい若者文化を生んでいます。

シンガポールでは、シンガポール人がつくったマンガとかアニメとかすべての作品を政府が厳しく検閲します。政府に対する批判はもちろん許されません。

 

 

 

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