佐竹 私は、きょうの韓国とシンガポールの先生方のお話を伺っていて、それからもう一つ、香港漫画サミットにも参加して話を伺ったのですが、これは私の勝手な感想ですが、特に韓国の関係者の方は非常に若くて意欲的、国も力を入れているということで、国民の関心も高いようだし、将来は期待していいのではないかと思います。
私は日本のマンガ・アニメと韓国、シンガポールなどの作品の違いというのは、一つは風土的な問題、もう一つは日本と皆さんの国とのマンガ・アニメの歴史の違い、それからもう一つは制度上の違いが非常にあるのではないかと、こう思っています。特に、最後の制度上の問題が大きいのではないのでしょうか。先ほどからのお二人の先生のお話のように、やはりマンガとかアニメというのは、何といっても非常に自由な発想、自由な表現ができないといけない。それなのにまだ内容の検閲なんかがあって表現や出版の自由が必ずしも保障されていない。この点がかなり大きく影響しているのではないかという感じがします。
それがあるがゆえに、作家もあまり出てこない、多様なキャラクターも出てこないのではないかと、そんな感じがしてならないんですが、いかがでございましょうか。
李 いまのご意見に本当に賛同しております。アニメーションが発達するとか、そういう面には、先ほどおっしゃったように風土とかそういうことも重要かもしれませんが、やはり支援、どういう形で制度をつくって、どういうように支援をしてくれるかというのが一番大事だと思っています。
韓国のアニメーションとかマンガが発達できなかった一番大きな理由が、システムの問題だったんです。韓国が本当の意味で民主主義ということを味わったのは、たぶん10年前からでしょう。本当の意味で韓国人が民主主義を味わったのはたぶんオリンピックがきかつけとなったと思いますし、1990年代に入ってやっとそれが実感できたと思います。その結果としていえるのが、1995年までは国のレベルで検閲がすごく厳しかったんです。マンガはもちろんアニメーションをつくるにおいても、国の思惑が必ず入っていました。