対岸はモスリムです。商売していますからモスリムの人が入ってきて歩き回っている。その風景は何百年、何千年も続いている。ヒンズー教があってジャイナ教があって仏教があって、それから不思議なことにキリスト教の教会がまたたくさんある。これはイギリス人がいたからです。それだけの宗教施設があって、人々はそれぞれの服装をして歩いている。言葉が通じない。習慣も違う。いろんな人達がいるなかで、仲良くみんなおおらかに暮らしていて、あまり理屈っぽいことを言わないんです。ですから、大陸というよりも島国的な地域で、私は、「ああ、文化とはこういうものだ。ごちゃ混ぜこそが文化なんだ。これを一本化しようとするのが大陸の人間の特徴なんだ」と思ってきたところです。
大陸は衝突を予防するためには一本化しなければいけない。だから、イデオロギー主義になってしまう。中国も文化が栄えていると言う人がいるけれども、「西遊記」以降何もないじゃないですか。莫さんどうですか。
莫 私も賛成です。
日下 そのころ、日本では江戸時代になってから続々と日本文化をつくっているわけです。あの頃から中国では新しい文化が生まれてこない。特に共産主義になってからはなお更です。ですから、何でも飲み込んでしまう、享受してしまうのは独自性がないとかそういうふうに思わなくて、独自性が必要な国はかわいそうな国だと、そのぐらいに思ってはどうかと思っております。
牧野 莫さんいかがでございましょうか。
莫 最近のアートはフォロムなどがありますが、ただ、やはり文化というものは人為的に作り出すようなものではありません。だからこそ、逆に私は十二動物がなぜシンガポールで受け入れられなかったのか、その答えに私は非常に興味を感じているんです。