日本財団 図書館


呉 まずつ一目ですけれども、理由のほうは先ほど申し上げました。理由よりも、私の考えでは、アジアの人がそんなに日本のマンガ、アニメを受け入れることが本当にいいことかどうか疑問があります。なぜかというと、マンガとアニメを通してわかる日本は本当の日本ではなくて、すごい表面的なものだからです。それはそれで日本の興味を生むきっかけになったらいいと思いますが、その表層で止まったらよくないと思います。それが一つです。

文化侵略あるいは文化植民地主義かどうか、それも人によっては違う考え方をもっていますが、私の考えでは、文化侵略ではありません。なぜかというと、日本の出版社あるいは漫画家はアジアのマーケットあるいは世界のマーケットをあまり意識はしていないんです。もちろん意識している人達もいますが、やはり描くのは国内向けです。一生懸命に日本のマンガとアニメを輸入しているのはアジアの人々です。日本の企業の人ではありません。日本の大使館とか日本の大きな財団、東京財団はちょっと変わってるんですけれども、ほとんど日本の若者文化をプロモーションしていないんですよ。日本の古典文化、歌舞伎、浮世絵とか、これを一生懸命に海外に提唱しています。それからみれば文化侵略とはいえないと思います。

次に、私がよく使う「hybridity」または「hybridization」。これは私の言葉ではないんですが、欧米の学者、特に文化研究の人がよく使っているアイディアです。マンガとアニメの場合はたぶんあまり日本と交流できないと思います。なぜかというと、日本が強すぎるんです。交流できるのは、両方ともある程度力をもっていること、例えば音楽とか映画とか、それだったら日本がアジアを学んで、アジアも日本を学んで、将来は似ているアジアン文化をつくれるだろうとそれは考えられるんですが、マンガの場合は私はそう思いません。たぶん、ますます日本が進むと思います。

 

牧野 日本化ですね。ただ、“他国の文化に染まる”とことでいえば、例えば漢字です。日本のいま文字から漢字を追い払ってしまうことはできません。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION