「十二動物」というシンガポール製のアニメはシンガポールと上海の共同製作ですが、なぜか中国でテレビ放送できるのは、それは中国政府の文化政策だといえます。中国政府は、日本あるいはアメリカのマンガの人気について、これは文化侵略ではないかと心配している。だから、中国の特徴がでているマンガを一生懸命プロモーションしているんです。ですから中国語で放送できるんです。作品のクオリティ、質とあまり関係ないと思うんですね。すごいいいものだから中国ででも放送する、というわけじゃない背景があります。
莫 あの作品を見ていないので、いいものかどうかは私もわかりません。ただ、シンガポールでつくられたものが、なぜシンガポールの市場では受け入れられなかったのか、そこを伺いたい。
呉 シンガポール人にとってあの作品のイメージはすごくダサい。本当はそう考えているんですよ。子供の好みも実際はあれじゃないんですよ。もっと想像力のあるものです。ストーリーもそんなにおもしろくない。つまり、十二動物によって中国の道徳を子供に教える、そういうのは子供に受け入れられません。例えばポケモンのなかでも友情を重んじるんですけれども、その表現の仕方はすごいうまいですね。
牧野 では、子供たちからみると、“お説教”的でない、もっとおもしろいものがほしいということですか。
呉 そうです。ストーリーでもデザインでも。これは私の想像ですが、先ほどの作品はシンガポール人はほとんど知らないです。
野崎 呉先生に二つほどお聞きしたいのですが、日本文化についての呉さんの講義は大学のなかでも1、2を争うような人気講座であるということですね。日本のマンガ・アニメに影響されて、という言葉を使っていいのかどうかわかりませんが、日本に対する関心をかきたてている。