小野 では、逆に英語のほうがむしろ読みやすいわけですね、一般的には。
呉 はい、そう思いますが、例えばミスターキャスーの場合は、読んでいる人はすべて20代、30代以降の人です。子供は読まないです。
小野 にもかかわらず、キャスーの人気というのはある範囲内に止まっているんですか。つまり、あれはアニメにしようという企てもあって、一度日本にきて日本のプロダクションでパイロット版をつくろうとしたことがありましたが、結局、その後はうまくいってないんですか。
呉 ミスターキャスーの場合、一度東南アジアのほかの国にも出版してみたんですけれども、失敗したんです。
小野 そうすると、現在ではあまり人気がないということでしょうか。
呉 今はもうほとんどやってないません。ミスターキャスーという雑誌も潰れました。ミスターキャスーの問題はシンガポール人じゃないと読んでもわからないところが多いんですが、先ほどの話と同じように、もし本当に日本のマンガを例えばシンガポールとか国際化したければ、自分の伝統をちょっと捨てて世界的な国際向けのものをつくらなければいけませんね。もし河童のようなマンガをつくったとしても、たぶん他の国の子供はおもしろいとは思わないのではないでしょうか。日本の子供でさえも、いま頭の中は河童の世界ではなくて、テレビゲームの世界です。だから、世界中で今流行っているのはポケモンとかピカチュウ、キティちゃんのように想像でできたものです。
牧野 私が申し上げたのは、その【想像上の動物】です。背中はカメ、お皿があったり、日本の子供のようでもありますし、カメのようでもあるし、カエルのようでもあると。そういったものを【どんどん作り出してしまう創造力】があるという見方。